第一章 猫江親兵衛 編
第7話 いざ、北海藩へ!
「わぁ、
東京駅の
『おい、
「あ、
みどりが
「もぉ! しょうがないなぁ」
みどりは言葉だけは渋々従う感じを出しながらも、
猫好きとはそういうものだ。
みどりと馬琴は、【猫探し】の
空席が目立つ……というより、乗っている人が
チュールで満足し、ゴロゴロと喉を鳴らして膝の上でくつろぐ馬琴の黒々とした毛並みを撫でながら、『牛肉重』を堪能していたみどりがふと呟く。
「こんなガラガラで経営成り立つのかなぁ?」
『今は外出自粛じゃから仕方なかろう、もう少しの辛抱じゃ』
「でも、JR北海道……北海藩はそもそも経営厳しいって言うし」
『じぇいあーる? 何を言うておるのじゃ、日ノ本の鉄道は天皇家
「え? そうなの?」
『まったく、常識のない
「うん、してたね」
『征夷大将軍になって
じゃからこそ中池も東京藩の秘宝を献上する決心をしたのじゃろうが……
話を聞いてみれば、中池の判断にも頷ける所はあるが、それで危険な目に合う方はたまったものではない。
「だからってさぁ」
頬を膨らませるみどりを馬琴が
『まぁ、そう言うな、そのお蔭でおぬしは
「それはそうだけどさぁ」
『そんな事より、おぬし、山下から
「写真? どうして?」
みどりは胸ポケットから探し猫・八房の写真を取り出して、馬琴に見せる。
『おぬしら人間には見分けが付かぬであろうが、ワシなら誰の八房か分かるかもしれぬ』
オッドアイを光らせて写真を覗きこんでいた馬琴が、呻く様に答えた。
『ふぅむ、これは恐らく
「猫江!?
『多分じゃがのぅ』
満足そうに毛づくろいを始めた馬琴に、みどりが問いかける。
「そうだ! 馬琴ちゃんって
『いかにも』
「その猫江さんってどんな人なの? 会えば分かる? 強い人なの?」
『一
猫江はその中でも
(こいつ! 猫のクセにそんなの見てたのか)
「わたしは別に熱をあげてなんかいません!」
みどりは馬琴の額を親指でグリグリしてささやかなお仕置きを済ませる。
「それにしても、馬琴ちゃんって仔猫だった頃の事なんかよく覚えてるね」
『ワシら八房はの、生まれた時から成人……いや、成猫なのじゃ。
もっと言えばワシらは代々記憶を引き継いで生まれる』
「だから、そんなジジくさいんだ……きゃぁ、痛い!」
指を噛まれたみどりが
『それはそうと、おぬし、いい加減に役所言葉で話したらどうじゃ?』
「役所言葉!?」
『本当に常識のない
みどりはようやく合点がいった様に頷いた。
「そっかぁ、それで病院とか電車の中の人たちは普通で、都庁の中だけおかしかったのね!」
(よーし、色々慣れてきたぞ! まずは猫江さんだ!)
みどりはキョトンとしている馬琴の頭を撫でながら『牛肉重』の最後の一切れを口の中に放り込んだ。
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