第六篇 家出少女
俺は何から逃げ出したんだろう。
・・・わからない。気づいたら窓から飛び出していた。そしてがむしゃらに羽ばたいていた。
先生や博士にも特に怒りは感じていない。オオカラスに対しても別に起こっているわけじゃない。俺の気持ちも知らないで、テキトーな慰み事を言ってきたのはちょっと腹立ったけども。
全ては俺が望んだ結果なんだ。怖いもの見たさで首を突っ込んで、見ない方が良いモノを見て、知らない方が良いモノを知った。俺はただの怖いもの知らずのガキだったのだ。全ては俺のせい。
ああそうか、俺が逃げ出したものは、俺自身だ。俺自身の血、俺自身の弱さを直視するのに耐えられなくて、そっぽを向いた。そんな甘っちょろくて責任感の無い、幼い自分も嫌になったのだ。
このパークのどこにも俺の居場所はない。フレンズのみんな、ヒトのみんなに、どんな顔して向き合えばいいのか分からない。どのようにして血に染み付いた罪を贖えばよいのかわからない。誰かのために生きる資格が許されない一人ぼっちの機械工は、世を捨て人を捨て、物言わぬ機械とだけ戯れて人生を消費する他ないのだろうか。
「・・・ふざけんなよ。そんなん嫌だよ・・・」
沸々と湧き出してくるマイナスの感情を翼に乗せ、俺は飛んだ。我を忘れて飛んだ。
そして夜が明けた時、俺はアンインエリアの北港にたどり着いていた。俺は無意識のうちに住んでいた場所に帰ってきていたのだ。こんな時でも発揮されてしまう帰巣本能とは恐ろしいものだ。
ぐるるるる・・・
空腹で腹も鳴る。こんな時でも何か食えよと俺に命令してくる摂食中枢も、恐ろしいくらい正直だ。
「お腹すいた・・・」
俺は摂食中枢に引っ張られて港の街を彷徨った。そして帰巣本能によって、数日前にオオカラスと朝飯を食べたカフェ”エルザ”に引き寄せられてしまった。
午前6時30分、モーニングの時間の店内はヒトやフレンズの客でそこそこ埋まっていた。みんなそれぞれ楽しそうにおしゃべりをし、時たまコーヒーに口をつける。疲れた寝不足の目で店内を見渡した俺には、昨日までは俺も居ることのできた当たり前の世界が、すごく遠くに行ってしまったように感じられた。咎人の子の俺に、当たり前の世界にある当たり前の楽しさを享受する権利などないのだから。
俺は、店内にいることが出来ず、ホットサンド2つとココアをテイクアウトし店を出た。
俺は一人で寂しく食べるのだ。
そう決意していた。しかし閉まりゆくカフェの自動ドアの隙間から漏れてくる客たちの話し声が、俺の気持ちを揺らがせた。やっぱり俺に一人は無理だ。俺はフレンズやヒトのみんながいる世界で生きていきたいのだと気づかされた。
ヒトとフレンズの社会への未練心を無視できず、結局俺はカフェの青い外壁のすぐ側に座り込み、朝日と潮風に吹かれながら朝飯のホットサンドにかぶりついた。
ここならば壁や窓から漏れた客の話し声が少しだけ聞こえる。ちょっと寒いし床の石畳が冷たいけど、実質店内の席みたいなものだ。いい席だ。
俺にお誂え向きの席じゃないか・・・くそっ・・・くそぉ・・・
涙をぼろぼろこぼしながら、俺は朝飯をかっ食らう。
***
「バイト君、これ捨てて来てくれない?」
「はーい、わかりました〜」
そんな軽いやり取りが聞こえた後、カフェの勝手口のドアがギイと開き、フレンズがゴミ袋を両手に提げて出てきた。紺色の髪を肩まで伸ばしたそのフレンズは、壁に寄りかかって座っていたセキレイに気づき、怪訝な顔をして近づいてきた。
「あんた、こんな所で何してんの?」
「・・・飯食ってる。」
「ここの商品じゃん。寒いし店内で食べりゃいいのに。」
「俺は寒さは大丈夫なんだ。ほっとけ。」
あっそぉ、と紺髪のフレンズはそっけなく言ってゴミを捨てに行き、手ぶらになって戻ってきた。そしてなぜかセキレイの隣に座り込んで、セキレイの横顔をじーっと見つめだした。
「なんだよ、なんか用か。」
気持ち悪いのでセキレイは紺髪から離れた。しかし紺髪はまたセキレイににじり寄って来た。セキレイは声を荒げる。
「だから何か用でもあんのかって!」
するとその紺髪はウムと頷き、
「あんた、出張で機械修理やってるセキレイさんだよな。」
「はあ?!」
突然名前を言い当てられたのでセキレイはギョッとして飛び上がった。
「だよね?」
「いや、そうだけどさ、俺はセキレイだけどさ・・・なんなんだアンタ。」
怯えるセキレイに対し、紺髪はニンマリとした笑みを浮かべ、唐突にセキレイの腕を取って引っ張った。
「丁度良い時に来てくれたねアンタ! ちょっとこっち来て!」
「えっ、ちょっと待てよ!」
「いやーラッキー! 射手座のアナタ、今日の運勢は最高ですってテレビに言われたの、早速当たっちゃった〜」
上機嫌な紺髪はセキレイを手を引きずいずいと歩いていく。
「実は、一昨日からこの店に一台しかないデカイ食洗機が故障しちゃってね。直せる人を捜していたんだ〜 あんたならいけるっしょ。」
「お、おい! 勝手に決めんな!」
セキレイは強引にその手を振り払い、その紺髪を睨みつけた。
「直せるとか直せないとかじゃない! 俺は、その・・・直さない。」
「直さない?」
「その資格がないんだ・・・」
「ふーん・・・?」
紺髪は不思議そうに首を傾げ、
「あんた、乙女座だろ。」
「・・・なぜ分かる。」
「乙女座、昨日の運勢最悪だったんだ。あんた、昨日辛いことあったんでしょ。顔がにべそかいていた跡がある。」
「・・・」
「でも大丈夫。今日の乙女座の運勢は良い方だよ。射手座の次に、だけど!」
紺髪がニヒッと笑った時、突然紺髪の後頭部めがけてすごいスピードで石鹸が飛んできた。果たして石鹸は頭に命中し、紺髪はうぅと頭を抑えてうずくまった。
見ると勝手口のドアのところには金髪のフレンズが仁王立ちしてセキレイたちの方を見ていた。その金髪のフレンズは紺髪の後ろにずかずかやってきて声を張り上げた。
「厨房に帰ってこないから何してるのかと思ったら、こんなところで油売っていたんですか。アルマーさん!」
「いやーごめんって、センちゃん!」
アルマーにセンという名前・・・博士の報告書に書いてあった名前だ。セキレイはハッとなって尋ねた。
「もしかしてあんたたち、”よろずや”の人たちか?」
そう聞くと紺髪と金髪はキョトンとしてセキレイの顔を見つめた。そして二人はお互い顔を見合わせた。
「聞きましたかアルマーさん。」
「うん。あたし達のお店の名前、覚えてもらえてるよ! やったねセンちゃん!」
そう言って紺髪は嬉しそうに金髪に抱きついた。金髪はまんざらでもない顔をしながら紺髪を引き剥がし、改めてセキレイの前にスラリと立って名乗った。
「はじめまして。私はオオセンザンコウのセン。こっちの紺色の髪の方はオオアルマジロのアルマーです。」
「そう、そしてあたし達二人はなんでも屋。皿洗いから傭兵まで、なんでもやっちゃう”よろずやセンちゃん”なのです!!」
胸を張る二人の前でセキレイは驚き呆れ、つい飲みかけのココアの紙コップを取り落した。
呆れ返るあまり、夜通し飛んだ疲れなど、なんかもう、どうでも良くなった。
「なるほど、あなたが修理屋のセキレイさんですか。先程はアルマーが失礼しました。とはいえこの店の食洗機が故障しているのは確かで、店主も困っているのです。セキレイさんのお力をお借りしたいのですが。」
センはセキレイに丁寧に伝え頭を下げたが、セキレイは依然として渋い顔をしていた。
「さっきも言ったけど、俺には資格がない。」
「ほう?」
「俺が誰かを助ける、人のためになるようなことをするなんて、そんな事、おこがましくてできない。」
「あら、そうなんですか?」
センはおどけて目を丸くした。
「セキレイさんが何を思ってそんなふうに言ってるのかはわかりませんけど、それは本当にそう思っているんですか?」
そう問われセキレイはうっと言葉を詰まらせた。
セキレイ自身、修理屋という仕事は絶対に手放したくないと思っていたし、今だって本当なら喜んで修理に行っていた。昨日までなら。しかし咎人の血がその希望を邪魔するのだ。咎人の子が人様の役に立つ仕事をする資格なんてない。少なくとも他人は、そうは見てくれないはずだ。
フレンズ殺しの子が何かやってるよ。父親の罪の償いかねぇ。
そう言われ、白い目で見られるのが関の山なのだ。
セキレイは希望を押さえつけるために下唇を噛んだ。
「悪いけど、そう思ってる。今は。」
「ほう、そうなんですか。」
センはジロリとセキレイを一瞥し、それからアルマーに目配せした。するとアルマーは怠そうな足取りで厨房に戻っていった。アルマーが去った後、センは、
「そうですねぇ。じゃあ仕方ない。」
と言って意味ありげにニヤッと笑い、アルマーと同じく唐突に手を掴み強引に引っ張った。
「じゃあ機械だけ直して下さい。誰に頼まれたわけでもない、誰のためでもない。たまたまそこに壊れた機械があったから直しちゃいました、ってことで。それならお互い良いでしょう。」
「おい、そんな勝手に・・・」
「いいからいいから。食洗機だけ直し終わったら、勝手口からさっさと出てっていいですから。」
「おい! 離せーっ! この人さらいーっ!」
セキレイは逃れようと暴れたが、セキレイよりも身長が高く腕力もあるセンに敵うはずもなかった。為すすべなく引きづられ、勝手口のドアから厨房に連れ込まれてしまった。
「で、このデカイのがその食洗機。」
「・・・」
カフェの広い厨房の端に置かれた、中型の冷蔵庫くらいの大きさの機械を指してセンは言った。セキレイは忌々しげに舌打ちして、その銀色の食洗機を上から下まで観察する。
「ちょっと前から異音がしてたんですが、一昨日からついに動かなくなったんです。電源は入るんですけど。」
「・・・取扱説明書と工具は?」
「そこに出しておきました。じゃ、後は適当にやっておいて下さい。」
センはそっけなく言い放ち、流し場に戻ってアルマーと一緒に皿洗いを始めた。
人の都合考えず勝手にあれこれ決めやがって、てめえらはオオカラスか・・・とセキレイは苛立ちつつも床に置いてあった取扱説明書を手に取った。するとセキレイの様子を横目で見張っていたセンが、流し場に立ったままセキレイに声をかけた。
「あ、そうそう。別にその食洗機、直せなくても誰も何にも気にしませんから。もともと外国で使われていた、年季の入った安い中古品らしいので。」
センが言い放った冷たい言葉が、セキレイのプライドに火をつけた。
(直せても、直せなくてもどうでも良い? 安い中古品だからしょうがない? そんな適当なこと言われて引き下がれるか! 見てろよォ、あの金髪。完璧に直してやるぜ。イライラが胸に溜まりまくってしょーがねぇ、丁度いいから全部ぶつけてやらぁ!)
それまでの憂さを晴らすが如くセキレイは食洗機の修理に没頭した。食洗機の必要なところだけをあっという間に分解し、洗浄ポンプの不具合とヒーターの電気系統の異常が故障の原因であることを突き止めた。電気系統のトラブルはその場で直し、洗浄ポンプも詰所の工具を持ち込んで分解して清掃し、再度組み直した。
修理にかけた時間は1時間。それだけの時間でセキレイは全ての問題を解決し、最後に食器を入れて試運転をしてみた。セキレイの思惑通り、食洗機は息を吹き返し、音を立てて食器の洗浄を始めてくれた。
「どんなもんだい!」
難解なパズルを解ききった時のようなスッキリした快感を全身に感じ、セキレイは右腕を突き上げた。
「お、直ったのかい。早いね。」
食洗機が音を立てて動き出したことに気づき、アルマーが洗い場用のゴム手袋を外して近づいてきた。
「ああ。勝手に、完璧に、やっといた。じゃあ俺は帰らせてもらう。」
セキレイはムスッとした顔で返し、床に散らばった工具類をせっせと片付けだした。アルマーはガラガラと音を立てて動く食洗機をしみじみ眺め、そしてどういうわけか厨房全体に行き渡るような大きい声を出した。
「みんなー! 食洗機直ったよー! これで大量の皿洗いから開放されるよー!!」
声が響いた後、厨房内は一瞬だけ静まり返った。そしてすぐに厨房全体から歓声と拍手がワッと上がった。セキレイは度肝を抜かれ、驚いた顔のまま、周囲の人々が嬉しそうに手を叩いたり、セキレイに感謝の言葉を贈る様を見た。厨房の外のホールにいたスタッフや客たちもその騒ぎに気づき、どうしたのかと厨房の奥を覗こうとする様子も見えた。
「おい、これはどういうことだ。」
セキレイは嬉々として食洗機を撫でているアルマーを睨んだが、アルマーはそんなセキレイに向けてニッコリ笑って答えた。
「いやーありがとう、セキレイ! 本当に助かったよ。あたしこの皿洗いのバイトに入ってまだ2日目だけど、正直朝早くて寒くて辛かったんだよね〜 でも食洗機直ったから、これでこの皿洗いのバイト辞められるよ〜」
「はあ? あんたらバイトまだ2日目なの?」
「そう。食洗機壊れちゃったから、皿洗いのスタッフが足りなくなったみたいでね。それであたしたちの店に依頼がきたのさ。ほら、うちは『皿洗いから傭兵まで』なんでもやるから。断れなくて。」
「ということは、あんたら、自分たちがバイト辞めたいがために俺を利用したってことか?」
と、セキレイがくってかかると、アルマーは舌を出してとぼけた顔をして、
「冗談よ〜 本心はこのカフェの人たちが食洗機壊れて困っていたから、何とかしてあげたいなって思ったのが一つ。あたしたち、このカフェの常連客だからね。もう一つは、セキレイ、あんたのお悩み解決のためさ。多少気が晴れたでしょ?」
「俺の悩みだって?」
「そう。あんた、無理しているのバレバレだよ。あんたは熱心な新人修理屋としてこの辺じゃあ知られているよ。そんな人が突然『修理したくない』なんて事言うの、おかしな話じゃないか。生き方って突然変えられないからさ。おそらく昨日、あんたの身に何か辛いことが起きた。それがあんたの本当の気持ちに蓋をしていた、あたしたちにはそう見えたのさ。違うかい?」
「ぐっ・・・」
図星だった。セキレイは言い返せず俯いた。
今度はセンが、セキレイを囲む人の群れをかき分け前に出てきて、セキレイの前に立ちはだかった。驚き怯えた表情で顔を向けるセキレイをセンは冷ややかな目で見下ろし告げる。
「セキレイさん。あなたは自分は他人の役に立つ仕事をする資格が無いとか、誰かの役に立つ仕事をするのがおこがましいとか、そんな事を言っていましたね。
あなたは自分の仕事が人の役に立つものだと、そんな傲慢さを持って仕事をしていたのですか? あなたは『誰かの役に立ちたい、誰かから認められたい。そのために修理屋の仕事を始めた』のですか?
違う。逆でしょう。『自分が好きな機械弄りを修理屋という職に昇華して、みんなの役に立てる仕事をしたい』んでしょう。仕事の目的が承認欲求を満たすことのみに成り果てた、飢えた浅ましい仕事人の心なぞ、客はあっさり見透かしますよ。
そんな致命的な倒錯をするくらい、あなたは今、自分を見失っている。自分がどういう輝きを抱いて生きていたフレンズなのか、それさえ見失いかけている。」
センは身じろぎ一つせずセキレイを見つめ続けていた。そしてフフッと微笑んでセキレイに近づき、セキレイの背に手を当てて、周囲を見るよう促した。
「自分と他人の間に線を一本引いて周りを見渡せるようになることが、大人の第一歩です。線の内側にいるあなた自身じゃ自分の姿はよく見えない。そういう時は線の外に映ったあなたの姿を見てみましょう。今あなたの周りにいるこの人たちの表情、仕草、言葉が本当、真実の評価を表しているのですよ。」
そう言われ、セキレイは周囲にいる人やフレンズたちを見渡した。
誰もが、小さなセキレイに向けて温かい眼差しを送っていた。未だに拍手を送ってくれるフレンズ、ブラボーと歓声を上げる西洋人、いつか見たヒトの子どもも親に肩車されて、ホールの方からセキレイのことを見ていた。
その子どもの両目は煌めいていた。咎人の子を見るような蔑んだ目ではなく、ヒーローを見る時のような、称賛や憧れの輝きを纏っていた。
「これがあなたの仕事、あなたという人間に対する、真実の評価です。自分で思い込んでいた印象と結構違うでしょう。」
「・・・そうかも。」
眼前の温かくて優しい光景を見て、セキレイは呟いた。一筋の涙が頬を伝った。
「私からも言いましょう。あなたは立派な仕事人です。ヒトやフレンズのみんなを助け、幸せにする資格は、ちゃんとあなたに備わっている。あなたはただ、一時の感情の濁流に飲まれ、自分の本質を見失っていただけなのです。
もう一度聞きます。あなたは物を直すことで人を助ける資格なんてないと言っていました。その認識は真実でしたか。それとも虚構、あなたの独りよがりな思い込み、卑下でしたか。」
「俺、考えすぎていたかもしれない。てめえに何がわかるって、オオカラスに怒鳴ったのに。てめえがわかってなかったのは俺の方じゃないか。」
セキレイは床に崩れ落ち俯いた。そして自分の心がどん底から救われたようなカタルシスを覚え、嬉し泣きに似た崩れた表情で涙を零した。
「こんな俺でも、役に立っていいんだな・・・」
セキレイの周りにいた人々は、次第にそれぞれの持場に戻って行き、最後にアルマーとセンが残った。うずくまったままのセキレイを前に、センがぼやいた。
「ちょっと言葉遣い荒くて繊細だけど、いい子ですね。」
「まー、若い時ってこんなもんでしょ。自分本位な世間知らず、おまけに打たれ弱い。センちゃんも数年前まではこんな感じだったよ〜」
「う、うるさいですよ。今は私のことはどうでもいいんです。」
「ニッヒヒ そうだね。」
アルマーはいたずらっぽく笑った。
「で、どうする? もう皿洗いの仕事は無いし。」
「そうですね。それじゃ、まかないだけもらって帰って、次の仕事にかかろっか。」
「そうだね。 この子には食洗機直してもらったし、お礼しなきゃね。」
「ええ。今度は私達が仕事をする番ですよ。あなたの深いお悩みの解決、この”よろず屋センちゃん”が請け負いましょう。」
また勝手に人のスケジュール決めやがって・・・二人のやり取りを聞いていたセキレイは内心毒づいたが、今は恥ずかしいくらいに涙で顔がぐずぐずだったので、顔を上げて怒る気にならなかった。
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