第5話 シチュー
どれだけ時間がたっただろうか。目をゆっくりと開ける。うっとりさせるようなよい香りに遅れて、木の器に入ったシチューが目に入る。湯気が舞っている。「ほら!早く食べないと冷めちゃうじゃない。」慌てて起き上がり、湊は器と同じような色をした木のスプーンを掴んだ。鮮やかなオレンジをした人参とルーのコントラストが食欲をそそる。湊はそのクリーム色を掬うとぱくり。湊の頬に河が流れる。その河に今までのような悲しみの色は全くなく、何とも透明であった。その一口があの出来事があってから三日、初めて喉を通った暖かい食事だった。三日間、なんども食べ物を口にしたがほとんど戻してしまっていたのだった。河は流れ続けた。「また泣いたら君の素敵な顔が台無しになっちゃうじゃん…」湊はスプーンを握りしめただ。柔らかな白が湊の頭をなでる。はっと思い出したかのように湊はシチューを再び口にする——
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます