第3話 雪の結晶

 少年湊は小さく答えた。「なんで湊なんですか?」女性は砂の上に"湊"という文字を刻みながら言った。「だって笑っていてほしいんだもん。湊っていう字には向かう、おもむくっていう意味があるんだよ。君には明るい未来に向かって行ってほしいな」少し湊は"君には"という言葉に何か違和感を持ったようだがすぐに「じゃぁ、あなたの名前は?」と聞いた。「私の名前は六花(りっか)。雪の結晶っていう意味なの!素敵でしょ??」六花はちょっぴり自慢げに言う。湊の顔が少し明るくなった。「なんで笑うのよ!!」頬を膨らませて六花が言う。湊は「なんでもないよ」と笑う。六花は若干不満そうにしながらも、「君にあったことが知りたいの。なにがあったか話してくれない?ここじゃ場所も悪いしうちにおいでよ」と話の糸を張りなおす。少し間を開けて「はい」と一言。緊張していた六花の口元が緩んだ。そして白くやわらかな手を前に差し伸べた。湊はその白色を下から掴んだ。先に立った六花に引っ張り上げられるように湊も足に力を入れた。西日はほとんどないが、二人の影を映し出すには十分だった。

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