第110話 大気に含まれる魔。
誰も居ないようだしと今夜はここで休むつもり。
まあ野宿もできるようには荷物も収納してあるけど屋根があるほうが良いに決まってる。
あたしはレイスに収納してあった食料、パンや干し肉の夕食をいただいて、クッションと毛布を出して教会の講堂の隅っこに陣取った。
とりあえず明日はどうしよう。
いつまでもこんなところで寝てるわけにもいかないし少しくらいはお金が無いと何もできないよね。
手持ちの食料だっていつまでも持つわけじゃ無い。それに。
早くやることやって元の世界に帰りたい。
その為にもこの世界の情報収集しなけりゃね?
元の世界のように冒険者ギルドでも有ればそこで何か換金出来るかもしれないなぁとか思いつつ、さっきここに来るまでの人々の服装を思い返してみた。
うん。
文化的にはあまり変わりがない。
ここがパラレルな地球なのだとしたら、住んでいる人間もそこまで変わらないのかもしれないな。そんな風にも思うけど。
明らかに冒険者風な防具に身を包んだ人も居たっけ。
としたら?
この世界にも魔獣みたいなのがいてそういうのを退治する人たちがいるのかも、だ。
明日は街の外に出てみるかな。魔物や魔獣が居たら、退治したら少しはお金になるのかな。
そんな風に考えながら、いつのまにか寝入ってた。
朝方は少し冷えた。冷たい隙間風に目が覚めたあたしは窓を少し開けて外の様子を眺めてみた。
朝露で湿った草をふみしめて、あたしは街をの入り口から外に出てみた。衛兵とか門の兵士とかが居る世界じゃなくて良かった。
そう思いながら辺りを見渡す。
遠くに見える小高い山以外には何も見えない。そんなだたっ広い平地。
麦かな? 米かな? 青々とした植物があたり一面を占めるそんな田園がしばらく続く風景に、平和そうなこの世界の情勢を感じて。
街の周囲数キロ四方は人の手が入りあまり高い木々は生えていないようだったけど、この道の先にはある程度纏まった木々が鬱蒼と生い茂る林が見える。
とりあえずあそこまで行けば何かわかるかな?
道の周囲には魔物の気配は無い。田畑が途切れ草原が続くだけの野っ原になってもそれはあまり変わらなかった。
魔力を纏った植物も見当たらない。薬草が自生していると良かったのにな。それも無いとは。
元世界と随分と違うんだなとそんな風にも感じて。
ポーションの材料になるような薬草は、多かれ少なかれ魔力が篭っているものだ。
マナや魔が世界に溢れていた元世界にはそんな粒子化した魔が普通に大気に含まれてた。だからかな、魔力が全くない生き物は居なかったし人にも必ず魔力が有ったから魔力紋で個人を判別するなんてことも当たり前だったわけで。
そもそも大気に魔やマナが全く含まれていなければ、
レイスにゲートが開いていればそこから多少の魔力が漏れる。それが魔力紋として感知されるわけで。
目減りしたマナを補充できなければ人の心はそのまますり減ってしまう。
それは、嫌だな。
ああ、そっか。だから大気に魔マナが含まれて居ない世界では人の
そっか。そういうことなんだとか変な風に納得したあたし。それでも、この世界の大気には全くマナが含まれてた居ないわけでもなさそうだ。ただそれが生き物に影響を及ぼすほどにたくさんじゃないだけで。
あたしは深呼吸をして。この世界の大気を、マナを、感じてみた。
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