第106話 邂逅。
邂逅
只々真っ白な世界。
何も無い。これはまるであたしの心の底、
魔法は? 使えない、か。
あたしの身体、この空間に溶けてしまったかのように実体を感じることができない。
やっぱりここって精神世界なの?
でも……。
もしかしてあたし、死んじゃったの……?
悲しい。自分が死んじゃったのかと思うその悲しさよりも、カイヤやティアともう会えないかもしれないとそう思う事が悲しい……。
ぷかぷかと只々漂う。
死んじゃったら人は
偉大なるその円環の、その
溶け合って混ざった個はその風船の膜のような境目がなくなる。
全ての個は一つに溶け混ざり、そしてまた新たな個として再生するのだって。
あたしも。
もしかしてあたしって自我もここで溶けて無くなってしまうのだろうか?
それは……、悲しいな……。
……確かにそれは勿体ない、ですね。
へ?
どこから?
何処かからか声が聞こえて。
……でも、貴女は死んだ訳では無いですし此処は
死んで無い、の?
じゃぁ此処は、何処?
貴女は、誰?
……覚えて無いのですか? 昔こうしておはなしした事あったのですけど。
はう。
でも、まさか、あれは夢の中の、あの記憶はあたしがまだ瑠璃だった頃の、そんな記憶で……。
でも、もしかして、ほんとに?
「デートリンネ、さん……。なのですか?」
……思い出してくれました? そう。わたくしはデートリンネ。記録と輪廻を司る管理者です。まあ今回は転生の手助けに来た訳では無いのですけどね?
転生する訳では無いのか。じゃぁどうして?
……ここは、貴女が居た世界の外。彼の方の内なる世界。そのマナの世界です。どうやら貴女の世界に穴が開いて、此処に飛び出してきてしまったようですね。
はう!
「帰りたい! 帰してください! 貴女ならできるのでしょう!? 最初にあたしをあの世界に連れて行った貴女なら!」
……連れて行ったというのは語弊がありますね。わたくしは貴女自身の
え?
……あそこは貴女の
ああ。ああ。そうか、だから……。
……あの世界は貴女の心そのもの、一部。ですから貴女が還りたいと願えばすぐにでも還る事が出来ますよ。でもその前に……。
一瞬の沈黙のあと。
……お願いです。わたくしの主、この内なる世界の真の神、彼の方を助けて貰えませんか? 貴女の力が必要なのです。
そう言ってデートリンネがあたしに向かって頭を下げるイメージが、見える。
その真摯な感情があたしの中に流れ込んできた。
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