第10話 猫ドラゴン! カイヤ爆誕。
その魔獣、ケーブビードがムカデのように長く節足動物特有な無数の外骨格が連なったその頭を高く持ち上げこちらを威嚇する。
クワッと大きな口を開き、蛇のような牙と舌が覗く。無数の脚がウネウネと動くのが気持ち悪い。
あたしはティアを庇って倒れ込んだ状態で、一瞬どうしようかと躊躇したその時。
——任せて!
と、カイヤがあたしを庇う様に立ち塞がった。
小さな黒い彼が緑に光る!
こちらからは見えないけど、胸のシズク石からエメラルドグリーンの粒子があふれているのだろうってことはわかる。
それは一瞬眩しいまでもの光となって、収束した。
そこに居たのは背中から尻尾まで緑の鱗に覆われたドラゴンの尾。
身体は元の様に黒いけど背中まで流れる髪の毛は艶々とした緑の毛がふさふさとたなびき、そして背に向かって流れる様に伸びている二本の龍のツノ。それでも頭の上にはちゃんと黒い猫耳が覗く。
両手は猫の手の様なグローブ状。そこから鋭い爪が伸びて。
こちらを確認する様に一瞬だけ振り向いたその顔は。
うん。
かっこいい人間の男性のそれだった。
「これは俺が相手をする! レティはそのままティアを守っててくれ!」
あは。その表情にちょっときゅんとするあたし。
カイヤったらこの姿になるとワイルドさも増すのか口調も少し変わるんだよね。
でもってそれってすごく好き。
ケーブビードがその巨体を震わせ突進してくるのを眼前で押さえ込むカイヤ。
その鋭い爪で切り裂きながら口から炎のブレスを吐く。
ケーブビードの無数にある脚が一部一瞬で炭化し崩れ落ちる。
ギャンオーと叫び声をあげあとずさるそれを逃さず追いかけ斬りつけるカイヤ。
はう。
レヴィアさんに貰った龍のシズク石。
これはあたしのドラゴンオプスニルと同じような効果をカイヤに与えてくれた。
もう少し攻撃特化に振られてたけど、ね。
もともと聖獣、その聖なる魔法結晶を体内に宿したカイヤはマナの総量は多かった訳だけど、それでもその小さな身体では戦いには向いているとは言い難かった。
それを補ってくれたのだ。
シズク石によって龍のマトリクスと融合した彼。
猫の特徴と龍のチカラを併せ持った龍神族へと変化した。
猫ドラゴン? そんな特徴を持ち、なおかつ成人の龍神族並の体力と技量。
もちろんあたしよりも体力的に上。ほんと頼れる相棒だ。
洞窟の狭い空間の中ではあるけれどそれでもその中を縦横無尽に駆け回りケーブビードを斬りつけていく猫ドラゴンカイヤ。
身体が切られちぎられてだんだんと短くなり、とうとう最後には頭を両断されこときれたケーブビード。
茶色い土色の魔石を残し、その身体が四散した。
「終わったね。カイヤ、ありがとう」
「ああ。なんともないか? レティ」
「うん。あたしもティアも無事だよ」
あたしはそう腕の中のティアを見る。さっきまで怯えて声も出なかったティア。その彼女がほおを染めてカイヤを見ているのもわかる。
「うそー。この彼があの猫のカイヤちゃん?」
「そうだよ。カイヤは強いの。ね?」
「まあな」
ぷいっと横向いてそう話すカイヤ。あは。ちょっと照れてる?
「あたしが他の人のパーティに入りたくない訳、わかって貰えるかなぁ?」
「うん。こんなに強いカイヤさんが居るならわざわざ先輩冒険者さん達を頼る必要ないもんね?」
「あは。だから当面あたしたちは三人でがんばろうね?」
あたしのその言葉にうんうんうなづいてくれたティア。
明日からはこの子の訓練も頑張らなくちゃ、だね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます