第11話 お肉パーティ。
帰りは行きより早かった。カイヤが大きい猫の姿になって森の入り口付近まで乗せていってくれたのだ。
もふもふの黒い毛皮に埋もれる様にしがみついたあたしとティア。その気持ちよさからか今日は色々ありすぎて精神的に疲れていたのかティアはあたしの前でカイヤに抱きついたまま眠ってしまっていた。落ちない様にと支えてあげたけどまあね。今朝は早起きもしたんだろうししょうがないなぁ。
「ティア。おきて」
森の入り口でほっぺたに触ってむにむにしてみる。
「んーん。もう朝?」
「ねぼけて無いの、ティア。そろそろ森を出るから起きて。カイヤのこの姿を街の人に晒したく無いの。魔獣扱いされたら嫌でしょう?」
「はうう。あたい寝ちゃってた? ごめんねあんまりにももふもふが気持ち良くて……」
はっと飛び起きたティア。申し訳なさそうに手を合わせる。
「寝てたのはいいの。疲れちゃったんだと思うしね。それよりも、早く街に帰ってマニの実とケーブビードの魔石を換金しましょう? そのお金で今夜はパーティ記念のお食事会ね?」
「あは。そっか。楽しみ。でもいいの? 魔石売っちゃって」
「これ一個くらいならティアが偶然見つけた事にしてくれれば良いわ。洞窟の入り口に落ちてました、って。魔獣同士が争う事だってあるし稀に落ちてる魔石が見つかることはあり得るわ。それに、きっとティアが拾った事にしたら、そこまで追求されないから大丈夫よ」
「そういうもんかな?」
「そういうものよ」
まああたしの場合無用な詮索をされたく無いだけだけどね。
そうしてギルドであたしはマニの実を、ティアは魔石を換金した。
マニの実は100ギル。魔石はなんと一万ギルで買取って貰えた。流石にカウンターでお金のやり取りをするのが憚られたのかマイアお姉さんティアを連れて奥に行って。
「奥の部屋なんて初めてで緊張しちゃった」
って話すティア。
他の冒険者の嫉妬や、横取りされる危険もあるからって絶対に内緒にしなさいって注意されたという。
そりゃあそうだよね。こんな年端も行かない女の子が偶然にも一万ギルを手に入れたって知ったら、きっと良からぬ輩が近寄ってくるに違いないもの。
実際あたしもこの子にそのまま一万ギルなんて大金を持たせておくのは危険だと思うしマニの実の分を半分、50ギルずつ山分けして一万ギルはあたしのレイスの収納に貯金しておくねということにした。
それでも「あたしあんまりまだ役にたててないし」と遠慮するティアだったけど、そこはそれ。
それと、途中で採った薬草はまだ数が少ないからもうちょっと貯めてから換金しようねって話したら、なんだか凄く納得された。
そうやって収納に入れてるからいつも新鮮な薬草を大量にもってこれるんだ、って。
ほんとは違うんだけどね。
あたしは薬草を見つけたときにはいつもそこで聖魔法を使って成長を促進して、増殖させてから摘み取ってたの。
まあズルだよね。
でもまあそんな事を話して聖女だったってバレても困るし、それに、植物の成長促進とか並みの聖女でもなかなか出来ないらしいから。
その辺はその辺で。話さなくてもいいことは話さないでいよう。そうも思うのだ。
でもって。
今夜も食事は山猫亭。
美味しいお肉パーティー。
巨大なイノ豚の魔物が狩られたらしく、街には今美味しいイノ豚のお肉が溢れているらしい。
薄切りにしたお肉と野菜を塩胡椒で美味しく炒めたのとか、厚切りステーキを甘辛いソースで和えたのとか、いろんなお肉料理を頼んだあたしたち。
あたしはビア、ティアはカシス水で乾杯して頂いた。
もちろんカイヤにも美味しいお肉のローストを頼んだよ。
「ビアって苦くない?」
「あは。お子様舌のティアにはそうかもねー」
「もう、すぐそうやってお姉さんぶるんだから!」
「あはは」
なんだかこういうのも楽しい、な。
あたしは少しほろ酔いで。ティアとの食事を楽しんでいた。
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