第8話 ご飯を食べて。
「で、これからどうしよっかな」
「え? 薬草の群生地に行くんじゃないの?」
「ばかね。そんなのあるわけ無いじゃない。そんな場所があったらあなた達がとっくに見つけてるはずでしょう?」
「じゃぁどうやって……」
「あたしにはこの子が居るからね。カイヤっていうの、かわいいでしょう?」
「にゃぁ」
カイヤもちゃんと猫の声で鳴いてくれた。
あたしの横からさっと現れたカイヤ、トントンってあたしの身体を登って肩の上に立って。
「この子がね、見つけてくれたのよ」
そう言って肩越しに頭を撫でる。カイヤも猫っぽくあたしの手に頭を擦り付けた。
って、もちろん嘘だけどね?
流石にズルして聖魔法の力で薬草増殖してましたとは言い辛い。
それに、少々いろんな事、カイヤが優秀なおかげにしておいたほうが不思議がられずに済むしね?
ティアが恐る恐る手を伸ばしてカイヤに触れる。
カイヤもちゃんとわかってくれてる。ティアの手の甲をぺろっと舐めてから親愛の頭すりすりのフルコースだ。
あは。
ティアの顔が綻ぶのがわかる。
「へー。賢いのねこの子」
「うん。賢くて可愛くて、おまけにすごく強いんだから」
「え?」
「あは。そのうちね。でもこの子が居てくれるから大概安心。まあ大船にのった気分で冒険しよ」
「うん!」
「じゃあね。今日は薬草を摘みながら奥の洞窟まで行こうか。マニの実が生えてる所があったんだ」
「うん。あたいも頑張って探すよ!」
そう言ってあたし達はケモノ道を森の奥に向かって歩いて行った。
脇に生えている草の中に薬草となる草が幾つかある。それを見つけながら摘んでいくの。
見分ける力も必要だし少しづつしか生えてないしで結構大変な作業なんだけどね? まあこんな感じではとてもたくさん摘むのは無理だしティアが怒るのもわからなくも無いかな。
なかなか薬草を薬草と判別出来ないティアを尻目にカイヤが次々とここにあるって教えてくれるから、あたしはそれでもけっこう摘めた。
ああこうやってたのねとでも言いたげに感心しているティア。ふふ。納得してくれたかな?
早朝まだ薄暗いうちに街を出てきたはずだったけど、お日様がずいぶん上まで登ってきた。まだ正午にはならないけどそろそろお腹が空いてきたかなぁ。
「ねえ。この辺りで休憩しましょう」
そう言うとあたし、木陰の座り心地の良さそうな場所を見つけてそこにシートをひいた。
防水加工がしてあるシート。そんなものをレイスの収納から出して。
「え? 今何処から出したの?」
ティアの荷物は背中に背負ったリュックの中にしまってあるっぽい。あたしがあんまりにも身軽に見えて、それも不思議だったみたい。
「ああ。あたし収納魔法が使えるから」
そう、あんまり大袈裟にならない程度に話すとティア、
「え? だって、そんな収納魔法が使える人なんて何処のパーティでも引っ張りだこじゃない。おまけに強くて治癒魔法まで使えるなんて。レティシアあんたそれってすごい事だよ?」
「うーん。ねえティア、それ、他の人には黙っててくれない? 内緒にして欲しいの」
「どうして!?」
「あたしあんまり他の人のパーティとか入りたくないの。大騒ぎされるのもちょっと嫌だし……」
「うーん。まああたいとしてはあんたを他の人に取られるのは嫌だけど……」
「じゃぁ、お願い。もうちょっとこのまま楽しく冒険者していたいんだ」
「まあ、そうだよね……。先輩たちのパーティに入れば確かに心強いけど、あたいたち下っ端は結局いいように使われるだけだもんね。うんいいよ! 内緒にしといたげる!」
「あは。ありがとう」
あたしはポットに水を貯め温めてお茶を入れる。
もちろんその辺も全部魔法だ。水を生成して温度をあげて。それくらいならけっこう簡単。
やっぱり収納から出したカップに注いでティアの前にも置く。お弁当も持ってきたのでそれも広げて。
「わあ。すごい。あたいも貰っていいの?」
「うん。もちろんだよ。あ、お弁当は山猫亭特製のガーリックライスだよ。美味しいの。昨夜買っておいたんだ」
「ありがとう。山猫亭のご飯かぁ初めてだ。嬉しい」
もきゅもきゅと食べ始めるティアの姿を眺めながらあたしはこれからのことを考えてた。
ついついほっとけなくて連れて来ちゃったけど、どうしようか?
収納魔法の事だってたぶんこの子よく知らないからつっこまれないだけだと思うけど、普通はこんなふうにごはんができたてのような状態で出てきたりはしないんだよね。
あたしの
たぶんしまっておく場所がレイスじゃない別の場所なんだろうなって思うけど、あたしは使った事ないからそれ以上はよく知らない。
ティアと一緒ならもしかしたらいろんな意味でカモフラージュになるのかなあとかも思ったけど、そんな利己的な考えだけで連れ歩くのも嫌。
この子の為に何か出来ること、そんな事も考えてあげたいな。そう思ってるのだけど……。
「ねえティア、あなたが得意なものは何?」
と、かわいい顔してご飯を頬張っている彼女に、そう聞いてみた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます