文芸部後輩ちゃんの不満
柊かすみ
文芸部後輩ちゃんの不満
鉛筆を置き、藁半紙に書いた矢印だらけのプロットから目を上げる。もうずっと下を向いていたのではないかと思うほど、目も首も肩も疲れ切ってしまっていた。肝心の脳みそは……そこまで使ったような気がしていない。まだまだということだろう。
ついさっきまで練っていたプロットは、今度のWeb小説コンテストに出すための短編のものだ。短編でプロットを書くものなのか、俺自身わからないがとりあえず書いてみた。するとどうだろう? 矢印だらけであとから読んで理解できるか不安になるような怪文書ができあがってしまった。一応というか、俺はこれでも高校生向け小説コンテストで受賞した経歴の持ち主で、物語を作ることに多少なりとも秀でているはずなのだが、アレはまぐれだったのだろうか。不安になってくる。
あぁ、斜めに差し込む夕日できらめいた窓ガラスが美しい。ここ図書室は基本的には日が差してこないようになっているが、この季節のこの時間だけは特別だ。図書室の空気自体が赤く染まっているかのようで、神聖さすら感じてしまう。ステンドグラスのきれいな教会とか、方角を緻密に計算し尽くして建てられた城とか、そういったものに引けを取らないような気がしてくる。
「部長」
と、たそがれていた俺に小さく声をかけてきた人がいた。向かいの席に座った我が文芸部の後輩だ。
「どうかしたのか?」
その声で現世に引き戻された俺は、正面の後輩を見て、小さな声でこたえる。
地毛らしい明るめな茶髪を低めの位置でおさげにし、メタリックな丸めのメガネをかけた、少しおしゃれではあるが普通と言える見た目の後輩だ。目鼻立ちも整っているが、浮いた話は聞かない。
しかしその性格はほんの少しばかり変わっている。例えば、初対面で、自身の茶髪が地毛であることを猛烈にアピールしてきたり。例えば、せっかくメガネを褒めたら、「実はこれ伊達メガネなんですよ〜。びっくりしました?」とカミングアウトしてきたり。例えば――
「部長、ちょっと今から毒舌美人先輩になってもらえませんか?」
こんなことを脈絡なく真顔で言ってきたり。
俺は、俺自身が「驚いたときに声を出さないタイプ」であることを神に感謝した。もしそのタイプだったら、俺は自習中の生徒だっている放課後の図書室で大声をあげてしまっていただろう。
とは言っても、心のなかではすでに大声をあげている。「は?」と。しかし俺はそれを口にしたくなるのを抑え、
「……それはちょっと無理かな。もうすでに、『元気な男の子ですよ~』って生まれてきちゃったから」
と洒落を交えて小声でこたえた。
「生まれたときってやっぱりそうやって、生物学的性別を宣言するものなのでしょうか?」
「知らん。というかなんだ? 毒舌先輩って」
「毒舌美人先輩ですよ、びじん! びーじーん!」
「わかったから机を叩くな、ボリュームを下げろ。そして『毒舌美人先輩』とやらがなんなのか粛々と説明しろ」
小声で「美人コール」をしていた後輩を、俺は「どうどう」と制止する。もちろんここは図書室なので制止する俺自身も静かに。
それが伝わったようで、後輩は落ち着きを取り戻す。というか、どこか恥ずかしそうだ。肩をすくめ、右手で左腕をさすっている。
「いや〜ちょっと思ってしまったのですよ」
「俺に毒舌美人先輩になってほしいと?」
「えぇ、まぁ」
もう一度書こう。どこか恥ずかしそうだ。目を見てくれない。俺はそれに嫌な予感がした。
「……理由は、ちゃんとあるんだよな?」
「もちろんありますよ! さすがになんの前触れなくそんなことを思ったりはしません! 部長はわたしをなんだと思っているんですか!?」
「落ち着け、どうどう」
「うっ、すみません」
また興奮しだした後輩を落ち着かせる。ここは図書室なのだ。
しかし嫌な予感が的中せずよかった。最も怖いのは、理由も脈絡もなく俺に「毒舌美人先輩」になってほしいと思うことだ。それはきっと変人とか変態とかのすることだろう。
「それで、理由は?」
「……簡潔に言うと、今読んでいる本に影響を受けた、というだけです」
「今読んでいる本に美人だけど毒舌な先輩が出てくるのか」
「毒舌で、かつ美人な先輩が出てくるんです」
「なるほど」
「部長、ちゃんとわかってます? 毒舌であるのもまた一つのよさとなっているのですよ!」
「どうどう。……まぁなるほど。毒舌美人先輩が出てくる、と」
「えぇ」
声を再び荒げた後輩を落ち着かせつつ、情報を整理する。……と言えるほど情報は多くもないが。
どうやら、どこか不満そうな顔をしているこの後輩がさっきまで読んでいた小説――見た目的にライトノベルだろう――に、毒舌で美人な先輩が登場するらしい。そしてそんな存在との関係性に憧れのようなものを抱いた、と。なるほど。
「なんで俺なんだ?」
いや、なるほどじゃない。理解できない。
確かに物語の要素に憧れる気持ちはわかる。俺だって初めてハリー・ポッターを読んだときには、魔法使いに憧れて校庭で拾ったきれいな木の枝を振ったものだ。残念ながら魔法は使えなかったが、それでも、その本への憧れは長い間消えなかった。
しかし、この状況は理解できなかった。俺は、魔法の杖の代わりにきれいな木の枝を使った。後輩は、毒舌美人先輩の代わりに俺を使おうとしている。毒舌でも、美人でも、そもそも女性でもない、このなんの変哲もない男子高校生を。理解できない。
「あぁ……それはですね? 実はこのヒロイン――なんですけど――含めた登場人物たちは、文芸部に所属しているのですよ」
「たったそれだけで俺にお鉢が回ってきたのか?」
「そもそも回す相手が部長以外にいませんから」
「あぁ……」
悲しいかな、我が部には毒舌美人先輩がいないどころか、毒舌でも美人でもない普通の女の先輩もいない。いや、部員名簿をしらみつぶしに探せばきっといるだろう。しかし、しらみつぶしに探さなければならない。
「というか部長、ちょっといいですか?」
「どうした?」
と、俺が忌々しき分厚い部員名簿に思いを馳せていると目の前の後輩が神妙な面持ちで問いかけてくる。
「わたし、このシリーズ以外にも文芸部が出てくる小説とか漫画とかアニメとか、嗜んでいるんですよ」
「そうか」
「……わたしたちの文芸部、異常じゃありません?」
「きっと創作が理想的すぎるのだろうな」
「現実が絶望的すぎます!」
後輩が机をバンッと叩く。振動はこちらへも十分に伝わってきた。そして、この文芸部の惨状を嘆く気持ちも十分に伝わってきた。
「とりあえず、気持ちは伝わったから落ち着け」
「落ち着かないといけない現状がもうすでに嫌なのですよ!」
バンッ!
「なぜ文芸部室がないのですか!? なぜアクティブな部員がわたしと部長だけなんですか!? それでいてなぜ部員数最大の部なんですか!? なんで毒舌美人先輩はいないんですか!?」
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
「では一つ一つ落ち着いて話し合おうじゃないか。というわけで落ち着け」
「……ごめんなさい」
ここは残念なことに、非常に残念なことに、文芸部室ではなくただの図書室なのだ……。他にも利用者はいて、なんなら司書さんもいる。ほら来た。
――*――
すぐに謝るあたり、この後輩も悪いやつではないのだろう。今はうつむいてしゅんとしている。
「えーではまず、一つ一つ事実を確認し合おうか」
「はい部長」
宙ぶらりんなおさげがなんとも哀愁を漂わせている。
「まず、『なぜ文芸部室がないか』だが、これは空いている教室がないから、軒並みなにかしらに使われてしまっているから、が理由だ」
「まぁ理解していますよ。我が校には部室棟みたいなものはありませんからね。もう飽和状態でしょう」
「そういうことだ。よって我が文芸部はその活動内容から、図書室を部室として間借りしている状態だ」
まず部室の件について。これは俺が昔、先代の部長から聞かされたことだった。
我が校には部室棟のようなものは存在しない。あるのは、吹奏楽部が根城とする教室たちと、これまた吹奏楽部が根城とする講堂と、科学部が根城とする科学棟と、美術部が根城とする美術棟、そして我が文芸部が根城とする図書室ぐらいだった。放課後になり空いた教室はすべてを吹奏楽部が使用しているわけではないが、読書をするにはいささかうるさすぎる、やかましすぎる環境だ。
「でも図書室って使い勝手悪いじゃないですか、ぶっちゃけ」
と、俺の考えていることはすでに理解しているだろう後輩は、くちびるを尖らせて抗議する。
その抗議は俺にとってもごもっともなものだった。図書室は、使い勝手がすこぶる悪い。例えば――
「まぁ、な。個人的には、鞄の持ち込み禁止がつらい」
「本の紛失防止のため、ですよね。表向きは」
「そうだな、表向きは」
鞄含む不用品の持ち込み禁止。最低限の筆記用具と本類しかこの図書室という空間には持ち込んではならない、となっている。
表向きは後輩の言ったとおり「本の紛失を防止するため」だが、実際にはきっと、「本の窃盗を抑止するため」だろう。あぁ、そんなことしないから鞄を持ち込ませてくれ。貴重品をポケットに押し込み、鞄を図書室の外の廊下に放置する、だなんていう非効率的であり、また汚くもあるようなことはもうしたくないというのが俺の本心だった。
「わたし、個人的に、こういった話し合いすら小声でしなければならないのがつらいです」
「そうだな、感想を言い合うことすらまともにできない」
「おかげさまで読書感想文を読み書きする能力だけ秀でていますよね、わたしたち」
「だな」
図書室には自習中の生徒だっている。よって私語は最大限慎まなければならない。よって読んだ本の感想を言い合ったり、おすすめの本をプレゼンしたり、執筆の相談をしたり、「なにか部として制作しよう!」というような会議も行えないでいた。そういったことをする際には、鞄が散らかっている図書室の外の廊下で立って済ませるか、もうすべてをかなぐり捨てて廊下に座り込み床を机とするしかなかった。すべてをかなぐり捨てた様はもはや土下座にも似た見た目の汚い書道だった。……ちなみに書道部は視聴覚室で頑張っていることだろう。書道は図書室ではできないため、視聴覚室利用の優先度は我が文芸部より高かった。悔しい。
「でも本当、おかしいと思うんですよ。わたしたちの文芸部って、部員数だけ見れば最大の部でしょう? 正直この図書室、広くありません。もし明日、全員が活動したらパンクしますよ?」
「生徒が幽霊部員としてサボるのに目をつむる代わりに、大した施しをしない――というのが教師側の立場かもしれないな」
俺の言葉を受けて、後輩はこれでもかと顔をしかめた。
「さっすが大人、汚い。それじゃあどんなことがあっても、少なからず誰かしらがサボらざるを得ず、施しはないままじゃないですか」
「俺の憶測だがな」
一応、憶測であるということをはっきり告げておく。……まぁやる気のない顧問といい、話をそらしまくる学校長といい、事実「そういうこと」なのだろうなとは経験的に思うが。
そう、俺はすでに部室問題について学校長にまで直談判している。が、それはこの目の前の後輩の知るところではない。
目の前の、まだ俺ほど汚れてしまっていない後輩は尋ねてくる。
「でも実際、『大した施し』はされていないのでしょう?」
「まぁ、活動費も一銭たりとももらっていない」
「……逆に施されたものってなんです?」
「文武両道という名目において課せられる『なんらかの部への所属』という責務の全う」
「うわー。さっすが大人、汚い」
「まぁな。大人が課した責務、大人が用意した抜け穴、そして抜け穴のための俺たちの不遇……」
正直なところ、もうつらい。部長やめたい。そもそも俺が部長をしているのは、他に生命活動を行っている部員がいなかったからに他ならない。現に俺はまだ二年生だ。
一年生の春、俺はやる気を持ってこの文芸部に入部した。そうしたらどうだ? この惨状。以来俺はなんとかこの不遇を解消すべく各方面に頭を下げてみたが、なんともならなかった。それこそ、学校側、PTA、他の部活、幽霊部員たち。下げられるところにはもう下げたと思う。
「部長権限でなんとかできたりしません?」
そんな俺を知らず、提案してくる後輩。
「アクティブ部員二名の弱小部の部長が、か? 多くの幽霊部員を抱えるメンツがえぐれている部の部長が、か? まれに廊下の床に這いつくばっている怪しく汚い部の部長が、か?」
「……ごめんなさい、謝るのでもうやめてください……」
気がつくと、目の前の後輩はうつむいていた。目に溜めた涙は伊達メガネ越しにもはっきりと見えた。
「……すまない。お前に当たってもなにも解決しないのに……。すまない」
一年生であるこの後輩は、やる気を持ってこの文芸部に入部した。昔の俺のように――。俺はこのできた後輩のためにも、頑張らなければならない。だというのに俺は、そんな後輩にまで頭を下げている。
情けない。
――*――
「わたしが読んでたこのラノベ、とある高校の文芸部を描いているんですよ」
「……そうか」
「主人公と、優しい幼馴染と、ツンデレなクラスメートと、毒舌美人先輩と、中等部のかわいい後輩と」
「……平和そうだな」
「えぇ、とっても平和です。わたしが一番好きなのはやっぱり毒舌美人先輩です。主人公と一年しか違わないのに、いつも手玉に取って遊んでいるんです」
「……それは楽しそうだな」
「……部長、今日の部活はもう終わりにしませんか?」
「そうだな。もう日も落ちたし」
「それと部長、うち、寄っていきません?」
「え? あぁそういうことか。送ってくよ」
「悪いですね」
――*――
下駄箱の違う俺たちは一旦校門で待ち合わせ、その後、彼女の家へ向かって歩き出した。
数歩先を歩く彼女の顔は見えない。この数歩分は、彼女を泣かせてしまった俺の罪の長さだ。
「部長。遅いです」
と、彼女は歩みを止め、俺が追いつくのを待った。隣に並んだときに見た彼女の顔は、どこか晴れ晴れとしていた。
「すまない、ちょっと考え事をしていて」
「奇遇ですね、わたしもです。でもそれでも部長は遅かったです」
「すまない……」
「謝るなら、わたしの考えたことを聞いてもらえませんか?」
彼女は俺と同じ速度で歩き始めると、そんなことを言ってきた。
「もちろん聞く。なんだ?」
俺は罪滅ぼしも含めて、彼女の話を喜んで聞くことにした。
「部長、今日、Web小説コンテストに出す用の短編を書こうとしていたんですよね?」
「まぁ、そうだ。まだプロットの段階だが」
「そのコンテストって、複数本出せたりします?」
「え? まぁ、出す人もいる。俺は複数本書けるほどのキャパないからやらないけど」
「うーん、そうですか」
と、彼女はまた考えることを始めたようだった。しかし表情はあまりよくない。
「……頑張れば複数本も書ける。それに今考えているのはプロット段階だから正直価値はない」
「ふふっ、部長。慌てちゃって」
彼女は笑った。それは声を押し殺そうとしていない、ごく自然な笑い声だった。俺が今まで聞いたことのない、柔らかな笑い声だった。
「じゃあそんな部長にお願いがあります」
「あぁ、なんだ?」
「最終確認! 部長、小説書くの、得意ですよね?」
「……好きではあるけど得意かどうかはわからない」
「そんなことを言っては、部長にコンテストで負けた全国の高校生たちに失礼ですよ?」
「……すまない、全国の高校生。あぁ、得意だ!」
「ならよし! 部長、今日のわたしたちのことを小説にしてください!」
――*――
「執筆の調子はどうですか?」
あぁ、斜めに差し込む夕日できらめいた窓ガラスが美しい――なんてたそがれていると、向かいの席に座った彼女が問いかけてきた。
「ぼちぼち、かな」
「便利な言葉ですね、ぼちぼちって」
「まぁまぁ、かな」
「変わりませんよ、ふふっ」
彼女は面白そうに小さく笑った。
あの日の俺たちを小説にして、Web小説コンテストに出す。その行為に何通りの「意味」があるのだろうか。
まず真っ先に思い浮かんだのが、俺のような不遇な文学少年、彼女のような不遇な文学少女がいるということを世に知らしめる、という意味。同情はお金や地位や名誉にはならなくとも、俺たちにとっては十分に価値がある。
次に思い浮かんだのが、賞を貰えたら我が文芸部の「実績」になるという意味。すでに俺は一つではあるが賞を貰えている。それが二つになる。部の待遇改善になるかどうかは未知数だが、やってみる価値はある。
そして――
「手が止まっていますが、どうかしましたか? 小説家さん?」
「その呼び方はやめてくれ。……ただ単に、俺たちのプライバシーをどうやって保護すればいいかなと思ってな」
「あぁ、わたし、部長のこと名前つきで呼んじゃってますもんね。……『部長』でいいんじゃないですか? 少しよそよそしくてあまり好きではありませんが、部長のプライバシーを保護するとなると、仕方ありません」
「助かる」
苦し紛れの返答ではあったが、実際、リアルを小説に書き起こす上で名前をどうやって伏せるかは悩んでいたことだ。これで、頻繁に名前を呼ばれる俺のプライバシーは守られる。そして、名前を呼ばれることのない彼女はもとから大丈夫。
と思っていたら、
「部長はわたしのこと、名前で呼んでくれませんよね〜?」
と、彼女が伊達メガネの奥から上目遣いをしてくる。
「呼んでもいいが、この小説には出せないぞ?」
「じゃあリアルでだけ、今度からは名前で呼んでください!」
「わかったから落ち着け。機会があったらな」
「あと、小説の中ではわたしのことは『後輩ちゃん』って呼んでくださいね!」
「それは考えものだな」
「えぇー」
まったく、彼女はつくづく変わった性格をしている。冒頭では「ほんの少しばかり」とオブラートに形容したのだが、今からでも書き換えるべきだろうか。
……よしておこう。いろいろと面倒だ。書き終えたあと、彼女による校正が入るのだから。
それじゃあここで、校正担当の彼女のご機嫌取りのため、情景描写と行ってみよう!
小説の最後を書き始めた俺の前では、彼女が楽しそうに伊達メガネ越しに本を読んでいる。その本の背を見たところ、どうやらあの日のライトノベルの続刊らしい。その様子を見ていると、こちらまで楽しくなってしまうのだから不思議だ。あとで借りようか。
あ、今、少し笑った。もしかすると本の中の世界では、毒舌美人先輩が主人公のことを手玉に取って遊んでいるのかもしれない。あとで借りることにしよう。
そうだな。この原稿にOKが出て、週末のファミレスで彼女の監視のもとPCに書き起こしたら、貸してもらうように頼むことにしよう。楽しみは最後までとっておくものだ。
おっと、「意味」を書いている途中だった。危ない、忘れてしまうところだった。
――*――
あの日の俺たちを小説にして、Web小説コンテストに出す。その行為に何通りの「意味」があるのだろうか。
まず真っ先に思い浮かんだのが、俺のような不遇な文学少年、彼女のような不遇な文学少女がいるということを世に知らしめる、という意味。
次に思い浮かんだのが、賞を貰えたら我が文芸部の「実績」になるという意味。
そして――なにより、俺と彼女が楽しいという意味だ!
文芸部後輩ちゃんの不満 柊かすみ @okyrst
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