海の底で9

 女王によると、アクアフィリスの騎士団や海に存在する他の国も、海の精霊をどうにかするべく動いているらしい。

 当然といえば当然だ。

 海の精霊は暴走状態で、海に暮らす生き物たちにも被害が出ているという。

 でも『どうにかする』って、たぶん討伐も視野に入ってるよね……。

 それはまずい。一番やっちゃいけない。

 繰り返すけど……万が一、海の精霊が消滅したりしてしまったら、この辺り一帯がどうなるかわからない。

 一応、女王に頼んでアクアフィリスの騎士団には決して精霊を傷つけたりしないように命令を出してもらったけれど……。

 早くなんとかしないといけないと焦るわたしは、女王にアクアフィリスの書庫を見せてもらえるようにお願いした。

 許可を得たわたしは、ミュウに書庫まで案内してもらう。その途中――


「やあ!」


「ええい!」


 通りがかった部屋の前から、聞き馴れた声がして、わたしは止まった。

 扉から中を覗く。そこに居たのは――


「どうしたチコくん! もっと本気で打ってこい!」


「言われなくてもやりますよぉ!」


 お互いに、武器を構えるロゼとチコだった。なにやってるんだろう。


「む、クロ!」


「クロさあああああん!」


 わたしに気がついた二人が、ものすごい勢いで同時に駆け寄ってくる。


「心配したぞ!」


「チコの方が心配しましたぁ!」


「あ、あはは……二人ともありがとう。ところで、なにやってたの?」


「訓練だ」


「訓練ですぅ」


 二人が揃って答える。実は仲良いんじゃないか?


「……訓練?」


「ああ、次こそは遅れを取らないためにな」


「はい、今度こそクロさんを守ってみせます!」


 意気込む二人は、訓練に戻る。

 うーん、やっぱり仲良くなれると思うんだけどなぁ……。

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