5話
……昨日は夢を見るまでしかねれなかった
今まで寝心地が悪いということはあっても、結構寝れてた方なんだなと実感する。
下に行くと、ジェーン姉さんが本を読んでいた。最近ずっとだなと気になってジェーン姉さんに話しかける。
「何を読んでるいるの?」
すると一旦本を閉じて俺の方をみる
「勉強……てところかしら?今のうちには教養がある人がいないからね」
そう言ってまた本を読みだす。
そういえばアリア姉さんも俺もまともに教育を受けたことがない。家族間のいざこざがあったからというのもあるが、アリア姉さんはそれを嫌う。
しかし教養がなければ、生きていくのは少し困難になるだろう。
まさかそこまで考えて……ないか
俺は自室へと戻ろうとする
「そういえばアリアが言ってた……もう少しで元の生活に戻れたかもしれないのに……取られちゃったって」
ピクッ
耳が上に動いて、一気に振り返る
「元の生活ってどういうこと?」
至って冷静に聞き返したつもりだ。大丈夫、取り繕え。
「女の武器は色気だって言ってアリアは聞かない。だがらやたらめったら舞踏会に参加しては男の人を捕まえようとしてたみたい……でこの家の再興ができるくらい偉い人を捕まえたって話だったんだけど……ダメだったみたいね、今も部屋で泣いてる」
耳が凍りつく。そして立ち尽くす。
嘘だ……
俺は寝室へと向かって走りだす。後ろのジェーン姉さんが困惑しているのなんか知らずに。
布団に飛び込むと、とにかく思い浮かぶのはアリア姉さんが家の為に舞踏会に参加したことと……昨日の夢のこと
最悪だ
一番繋がって欲しくない点と点が重なり合った。
……そうだ……まだ魔法が解けてないんだ……そうに違いない
こんな作り話みたいなストーリーも、俺のこの気持ちも
全部魔法が作り出した有象むぞ……
「有象無象なんて失敬なこと言うじゃないか」
俺はその声の主をを睨みつける
「おいおい、そんな目で見るな。私はもう魔法はかけてないし、その状況も気持ちも、全部お前が作り出した有象無象だ」
「そんなはずはない!!俺は……俺は」
「受け入れられないか……もっと芯のある人間だと思ったのだがな……まぁ王子は女のお前を探し回っているがな」
哀れむような声を残して、目の前の奴が消える。俺は拳を握りしめて、その場にへたり込んだ。
ありえない……俺は……あいつが嫌いで……
姉さんは嫌な奴らで……この家を愛しているのは俺だけで……
思いつく限りの言い訳は全て俺の方に戻ってくる。
後ろから心臓を掴まれたようなゾクゾクが背中を走る。
頰を流れた一粒の涙……その涙は同情に値しない、とても自分勝手な涙だった
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