追加話1(第1.5話)「情報自衛隊準備室の男」
「自分もバカだなこんな小説信じて地下鉄まで来るなんて……」
彼、浦切蝶間巡査長は地下鉄の入り口に居た、そこは町中の歩道横に「ポッカリ」と開いた地下鉄の入り口で乗降客数の比較的少ない場所だった。
***
【タイトル】
地下鉄ガソリンテロ事件
【作】
ラプラス+ノベリスト
そこは乗降客の比較的少ない地下鉄の駅だった。
犯人達はまずそこからバラバラに侵入した、犯人達の持つペットボトルにはしっかりと封がしてありガソリンを持ち込むのは簡単だった。
犯人A「まずオレが偵察だ」
犯人Aは何度も自分の作業服に少量のガソリンを染み込ませ地下鉄構内を歩き回っていた、そう、ガソリンの匂いを検知がされるかどうかを試すためだ。
犯人B「Aが戻って来たらオレから行く、あとは5分ごとに一人ずつ、中央駅ホーム、商業エリア、全出入口にガソリンを巻いて逃げ場をなくす」
それは犯人達も逃げ場をなくすことを意味していた。
犯人Aがただの紅茶の入ったペットボトルを手に地下鉄に入って行った。
回りにあるカフェやコンビニ、レストランや本屋にはスーツの男達が待機しており、その多くが背にリュックとその中にガソリンの入った紅茶飲料のペットボトルを隠し持っていた、そして最初に入り中央駅改札まで昇る男達は駅員のいる付近で事件を起こす為すぐに取り出せるコンビニのレジ袋にそのペットボトルを入れオニギリやパンと共にそれを持っていた。
〈続〉
***
「すいません火貸して貰えませんか?」
浦切蝶間巡査長は地下鉄の入り口でタバコをくわえガスの無いライターを「カチカチ」といわせながらコンビニのレジ袋にオニギリと紅茶のペットボトルを持ったスーツの男に話してかけた。
「あ、いえ、僕はタバコ吸いませんから」
優しそうなサラリーマン風の男が少し困り顔でそう言った。
「はは、そうですよね、ガソリンなんて持ってたらタバコなんて吸えませんよね」
浦切蝶間巡査長はそう言うと「にこり」と笑いスーツの男は表情をなくした。
***
「こちら公安の浦切蝶間巡査長です、ああ、すいません田元中さん、いえ、ちょっとトラブルに巻き込まれまして……」
浦切蝶間巡査長はスーツの男の背に立ち静かに手首をきめて押さえると、レジ袋から紅茶のペットボトルを取り出し片手で開けるとそのしっかり封のされていた紅茶のペットボトルにガソリンがあるのを確認した。
「うう、ナゼ?」
スーツの男は何処から計画がばれたか解らないといったふうだ。
「あ、そんなことは知らなくていいから、あと自分タバコ吸わないから火はいいよ」
浦切蝶間巡査長自身ナゼと思った、それは偶然読んだネット小説の内容だった。
***
「仲川帝都さんですか、自分は公安警察の浦切蝶間巡査長と言います、今日はお話をおうかがいしたくてこちらを尋ねました」
仲川帝都のアパートに浦切蝶間巡査長の姿があった、仲川帝都はその後ろの道路に街の中でよく見かける白のワゴン車が停まっていることに気づく。
「別班の方ですか? 急ぎます荷物を運び出して下さい、あと誘拐に見せかけるのでコートや靴、眼鏡などは置いて行きます」
仲川帝都は何の疑問もなくそう言うとそそくさと準備を始めた。
「え? あの、仲川さん?」
浦切蝶間巡査長をされる男はこの事態を予想していた、予想していたからこそ仲間をつれてきた、しかし実際目の前で起こると凍りつく。
「[ラプラス+ノベリスト]はあそこです、床に散らばった筐体と出来れば使いなれたモニター、キーボード、マウス、パソコンデスクとゲーミングチェアも持って行きます」
浦切蝶間巡査長とされる男の後ろでは動きの慌ただしくなったアパートに対処すべく彼の仲間の男女がすでに動き出している。
「これが[ラプラス+ノベリスト]?」
浦切蝶間巡査長とされる男は[ラプラス+ノベリスト]を仲川帝都のペンネームだと思っていた、仲川帝都が未来を書いているのだと、しかし違った、目の前の男は未来を書く小説家ではなく未来を書く小説家の開発者だったのだ。
「急いで下さい、取りあえず浦切蝶間さんでいいんですよね、僕は貴方達につきます、このルート以外では京子さんの元に戻れそうもないんです、あっ、スマホは追跡されるかも知れないのでそちらで処分して下さい、大学ノートはただの勉強のノートですが残すと外部犯じゃないと気づかれるのでそれも処分します、このノートPCは大切なものなので持って行きます」
そう言うと仲川帝都はスマートフォンの電源を落とすと浦切蝶間とされる男に渡し通信機能を大学と同じ様に物理的に外したノートPCを脇に抱え黒の靴下のまま外に出てワゴン車へと向かった。
「はい……解りました、おいお前ら、パソコン関係とノートは全ての持ち出せ!」
浦切蝶間をされる男は合流した仲間にそう命じる。
浦切蝶間とされる男とその仲間は情報自衛隊準備室、ぞくに別班と呼ばれる自衛隊スパイ組織の隊員だった。
暖房を付けてもらったワゴン車の後部座席、自衛隊員の男女に挟まれチェックのネルシャツを着て親指に穴の開いた黒い靴下を履いた仲川帝都の姿があった、その手にはスマートフォンからコピーした写真やメール、栗栖川京子教授との思い出がつまった同じウサギのシールがはられたノートPCが大事そうに抱えていた。
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