第28話『第三の目』
「この奥だね」
僕達は『スタッフオンリー』と書かれた扉の前に立った。
「この奥に元凶がいるのか?」
「ああ、おれの『感覚』が言ってるんだから間違いないって」
「そうか...」
彼の脳力は結構優秀で『対脳獣視覚』『対脳獣感覚』『対脳獣聴覚』も持っている。
「感染対策は何かあるの?」
「最悪、感染しててもゴリ押しで行けるかなって思ってた…」
(適当だな…)
とか思いつつ、いつも通りの誠太に心の底で安心する。
「さあ、開けるよ」
ガチャ
扉は簡単に開いた。
「うおっ」
誠太は何を見てか知らないが、一人で叫んでいた。
「じゃあ強制入場するから、戦ってね岳流っち」
「任せといて!」
「ラップトップより申請,強制入場,千の塔,100階,円形闘技場」
「うおっ」
脳内世界に来ての僕の第一声はそれだった。
「なるだろ?そうなっちゃうよな?」
目の前には黄緑色のウネウネ動く物体があった。それは例えるならば…
「スライム?」
「だったら飼いてーわ」
「やめとけよ、ラップトップ」
「先走るなよ、クサナギっち」
「グロロロロロロー」
コビッドが唸り声をあげる。そして僕らの声がハモった。
「「うわぁ」」
気を取り直して、戦闘開始だ。
「まあとりあえず、お世辞にもおれの脳力は戦闘向きとは言えない。お前とお前の仲間に任せた。おれは援護する」
とラップトップ。
「分かった。イツキ、サスケ。行けるか?」
と僕。
「しゃあ!腕がなるぜ。最近撃ってなかったからな!行くぞ『メモリアル・ショット』」
そして、
『メモリアル・ショット』
イツキの脳力。自らの持つカメラで撮影した『記録』に宿る『感情』をカメラから撃つことができる。感情によって威力は変わり、追加効果もある。負の感情ほど強く、正の感情ほど弱い。
この時彼が撃ったのは『怒りの感情』だ。負の感情の為、威力は強い。そして、追加効果は『状況判断能力の低下』
「クサナギ、かたじけない。久々の技、何をご所望で?」
とサスケ。
「いつものお願い!」
と僕。
「あい分かった。『
そして、
『
サスケの脳力。さまざまな動物に姿形を変えることができる。ただし、架空の生物にはなれない。
サスケは忍者の見た目をしているが、これが元々『変化』した姿で、その正体は二匹の白蛇である。元が蛇のため、『人間』以外で最も得意な『変化』は『大蛇』だ。
イツキは肩に構えたカメラから
イツキの『メモリアル・ショット』はコビッドに命中する。しかし体の一部分が消えただけでまだ生きている。そしてサスケが振るった尻尾もコビッドを捉える。コビッドの身体が千切れるがまた繋がってしまった。
「おいクサナギっち、そいつは小さな脳獣の集合体だ。その黄緑色の脳獣を生み出しているコアが中心にあるはず。そいつを壊さねえと黄緑の脳獣は生まれ続けるぞ」
ラップトップのアドバイスに目配せでお礼をすると、僕は想像した。
(本当はダサいからこれは使いたくないんだけど...)
「『想像創造』油性ペン」
僕は右手に油性ペンを想像創造した。僕は前髪を分けると額に『目』を描く。
「『第三の目』開眼っ!」
僕が昔倒した脳獣がいる。『三ツ目』の脳獣『ツキミ』僕は彼女と契約した。彼女の脳力は『第三の目』と、
『第三の目』にはいくつかの力がある。
『
『
『
ただし、『
治療が必要な脳獣は『契約』する脳戦士に自らの持つ脳力を渡すことで『脳内世界』で生きられる。そのかわり、脳力を失った脳獣は『現実世界』では生きられない。つまり、一つでも脳力のある脳獣は『現実世界』で生きていける。つまりツキミは、ある特殊な状況下であるなら、『現実世界』に出てこれるのである。
また、バイヤは『灰の目』の他に『吸血』『蝙蝠化』という脳力を持っている。それは使用に特に条件はないのでいつでも出てこれる
そして僕は、ツキミの脳力のうちの一つ『千里眼』を使う。
「『千里眼』」
『千里眼』
透視に関してならばサーモグラフィーカメラの映像に近い。肉眼で捉えられる物は青、一つ通り越した先に見える物は緑といった風に見えているだけだ。
遠視はドローンカメラの映像と言った感じだ。
このときだって、黄緑から青に変色したスライムの中に、緑色の玉が見えている。実に気持ちが悪い。
「見えたよ」
「よし、そしたらそこ、を...」
そのままラップトップは崩れ落ちた。その顔が少し赤かった。
「おい、大丈夫か?」
「うう、うっ。体が、熱い」
(これがコビッドの脳力か...)
「『動体視力向上』」
僕は『千里眼』を解除して『動体視力向上』を使用する。
『視力向上』
ツキミの脳力の一つ。額に宿す(ペンで描いた)第三の目を強化する。動体視力やその他
(見えた)
空中を漂う黄緑色のウイルスが見えた。
「『想像創造』」
僕は手にマスクと薬を二人分想像創造すると、ワンセットをラップトップに投げ渡した。
「それ飲んで、それして」
薬の見た目はカプセル薬だが、実は中身は少し違う。まあ、彼には効くだろう。
「ふう、少し良くなった気がする。にしてもこの薬、甘いね」
「ウイルスの正体が分からないからね、どんな菌にも効く薬を調合してみた」
嘘だ。でも、本当のことを言ってはいけない。
「もう大丈夫だ。俺に気兼ねせずやってくれ」
「じゃあ、決めるよ。『想像創造』『天叢雲剣』」
僕の剣がコビッドのコアを貫いた。
「おつかれ岳流っち」
駅への道中誠太が言った。
「元気そうだな」
「ああ、あの薬のおかげだ。すごいなどんな菌にも効く薬ってのがあったんだな。知らなかったよ。」
「そんなわけないだろ?それだったら病気での死亡率が高い人間の平均寿命はもっと伸びてるよ」
「えっ?じゃあ何なのあれ」
「あれはね...」
僕はそこまで言って後悔する。
(やべ...)
「どうしたんだよ岳流っち。具合でも悪いのか?」
きっと僕の顔は真っ青になっていることだろう。
「別に悪くはない。でも言いたくないのだが...言わなくていい?」
「なんで?」
「……ね?」
「早く早く」
僕は観念して言う。
「あれは…砂糖だ」
「サトウ?知らない薬品の名前?もしかしてあの料理に使うやつじゃないよね?」
「もしかしなくてもあれだ。しゅがーだしゅがー」
「シュガー?知らない薬品の名前?」
「いつまでそれやるつもりなんだ?甘かっただろ?」
「たしかに…」
「過去には薬と言われて渡された砂糖を病人が飲んだら治ったという研究記録があったりする。プラシーボ効果。『病は気から』とかいうやつだな」
「なるほど…」
「医者ならまだしも僕が提供した僕称薬を飲んで治る奴なんて僕を相当信用している奴だけだからな」
「なるほど…おれ、もう人が信じられないかもしれない…」
「安心して、人が信じられるようになる薬をあげるから」
と言って僕はカバンを漁る。その中から適当に掴んだ物を取り出し、誠太に手渡す。
「これは?」
「レシート」
「レシート?」
「うん。物を買った時にもらうやつ」
「年上おちょくるのもいい加減にしろよ!」
相当キレさせてしまったので、僕は慌てて駅に逃げていった。その後、僕が彼の頼みを聞くことを条件に許してもらった。
「岳流っち、レシート置いてっちゃったよ。なになに?ペ…へぇー」
誠太はレシートを見て、
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