第11話 未知の狩

「そうか・・・。じゃあ、お願いしようかな!」


最近ハンターランクを2にしたらしいおっさんが、笑って言う。

おっさんを助けた森丘フィールドでの狩猟。

俺たちのパーティーの目標であるアルマロスの討伐任務を俺たちよりも後にギルドに入ったおっさんが、依頼を受けていた。


年の甲なのだろうか、明るく元気なおっさんを見ていると応援したくなる自分も居たが、身の程知らずだと馬鹿にする自分も確かに居た。

おっさんの獲物はハンマー。しかも曰く付きで有名な『モスハンマー』。


大抵の狩人はこのハンマーの使用を嫌う。

なにせ、スキル【死神の加護】はその名の通り、狩人の命を奪う。

攻撃力と切れ味は良いが、あまりにも強いデバフスキルのせいで使用者は基本的に死ぬ。


このおっさん、それを知らないで買ったんじゃ・・・。

基本的に狩人は自己責任だ。その情報を知らずに買ったのはおっさんの責任だ。しかし、少なくとも今までは使いこなして来たのだろう。


「なんせ、ハンターランクが2だからな」


俺たちパーティーが一丸となり、薬草採取のクエストから始め、2年かけて至ったハンターランクが2だ。

その間は命に直結するので、訓練は欠かさなかったし、狩人ギルドが不定期に開催する先輩ハンターからの指導を金を払って受けてきた。

自己の研鑽をし続けたという自負があるし、休みを取った事も無い。


俺は、おっさんに対して少しの嫉妬心を抱いていた。

パーティーメンバーも少なからずそう言った感情は有るだろう。なにせ、全員が努力して来たのだから、新人ともいえる弱そうなおっさんに並ばれるのは座りが悪い。

それに、あのアルマロスの討伐だ。

中級中位の火竜アルマロス。このモンスター1匹で200人規模の村の人間を皆殺しに出来る程の強力なモンスター。これを討伐できる狩人はこの国には指で数えられるくらいしか居ない。

だからこそ、俺たちは火竜アルマロスの討伐を目標に努力を重ねてきたのだ。

この国で有数の狩人になろうと。


「アルマロス討伐で楽しいのは回避なんだ!火球も尻尾攻撃も咆哮も飛行後の爪攻撃も全部フレーム回避できる!」


楽しそうに語るおっさん。

それを優しく見るパーティーメンバー。

恐らく、先輩狩人としてモンスターの恐怖を教えてやろうとでも思っているのだろう。狩人に必要な事は何よりも警戒心なのだから。


アイテムのフラッシュボムを使えばモンスターを一定時間足止めできる。だからこそ、この余裕だ。戦うとなれば実際に勝手が違いすぎるのだから、ハンターランク2になったばかりのおっさんも懲りるだろう。


「じゃあ、フォーメーションを決めようか。先ずはイリヤ君。ライトボウガンで状態異常弾は何が使える?」


「毒弾、麻痺弾、睡眠弾よ」


「じゃあ咆哮の範囲外から先に毒弾、次にに睡眠弾を頼むよ。トッド君はイリヤ君を火球から守ってくれ!基本は3連発だからね。頼むよ!突進は受け流しでね!」


「うむ」


「セレナ君はアルタスの掃除と、アルマロスの左足への攻撃を頼む。ガード優先でね!」


「ええ、解ったわ」


「グロッグ君は尻尾切断をお願いするよ!後、武器の置換も頼むよ。私は頭を攻撃するから」


「わかった、じゃあ行こうか」


俺たちにはフラッシュボムが有る。

おっさんは用意していなかったみたいだが、こういう所で日々の研鑽の違いが出てくる。

パーティー全員が無事にこの場所に帰って来る事。それが俺の目標だった。

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