第9話 おっさん。恐怖される
ギルドマスターは力のある人間がすることになっている。
それはハンターギルドの受付嬢を守る為であり、場合によっては非道なハンターを処分する為である。
詰る所、ギルドマスターはハンターとしての格もある程度は求められる。
60年前、当時の精鋭ハンターであった私にとって、鳥竜クアルコスは大した敵では無かった。
しかしそれは、十分なアイテムを買う事が出来て、武器も防具も1人前以上になった中級上位になってからの話だ。
そして討伐任務とは大抵の場合1日以上の時間を掛けて行われる。
これは索敵や拘束用のアイテムの準備の時間を十分に取り、周囲の小型肉食獣を討伐する時間も含まれている。
中型・大型種を狩る場合にはどうしても小型肉食獣は邪魔になるからだ。
しかし、この男は違った。
拘束用アイテムを一切使用せずに必要なエリアのみで小型肉食獣を狩り、そのエリアのみで中型の鳥竜クアルコスを討伐して見せた。
中型以上のモンスターは体力が多い。
こういったモンスターは体力が減ってくると別のエリアに移動し食事や睡眠を行い体力の回復に努めるため、1エリアでの討伐はしない。
他のエリアの小型肉食獣を討伐するのは中型以上のモンスターの餌になるからでもある。傷付いたモンスターは餌を食らうと急激にその体を回復させ、力を増す事もあるのだ。
それ故に、ハンターとは4人程度のパーティーを組み、殲滅力を上げる事に努めるのだ。
それに、防具無しでフィールドに向かう事があり得ない。
基本的に狩人は安全マージンを取ってクエストに向かう。
これは基本的に防具に合わせた安全マージンを取るのであって、防具が無いのであれば最低ランクの採取クエストからスタートするのが基本的な考え方だ。
命を賭けて狩人をしているが誰だって死にたくないのだから、これは当然の考え。
故に、ソロで中型狩りもあり得ない。
パーティーとは、もし怪我をして行動不能になった場合の保険でもある。
ギルドが軽装備の片手剣やライトボウガン使いをパーティーに1人は加入させる事を推奨しているのは、怪我人をベースキャンプに担いで運ぶ為に武器が重かったら邪魔になるからであり、つまり狩とは怪我をする事前提で考えられてきた。
それを、この男・・・。
今までの狩を根本から変えた。
防具無しのソロ討伐。
討伐時間についても鍛冶場で買える下級中位の武器で5分以内。
「・・・・・・あり得ない」
あり得てはならない。
たった、1度も攻撃を受けずに5分以下の討伐時間。
狩が終わった後にする『乱数調整』という謎の儀式。
その、洗練された狩の在り方は今までハンターギルドが推奨してきた狩の方法を完全に否定していた。
この男にはギルドマスターとして聞く事が山のようにある。
帰りの馬車の中で、私は中年の男。いや、『おもちさん』に聞いた。
「何故・・・。防具を付けずに討伐クエストを受けるのですか?」
命が惜しく無いのだろうか。
「全部避ければ大丈夫だからですよ(*^^*)」
「いや、それは・・・。」
理想論だ。
「どのような攻撃でも当たらなければダメージを受けない。つまり、全部避ければ大丈夫と言う訳です(*^^*)」
卓上論だ。どんな狩人がそのような事を出来ると言うのか。
しかし、この男は私の前でそれをやってのけた。
「・・・。では、あの『乱数調整』とは何なのですか?」
「レア素材を確実に剥ぎ取るための儀式ですよ(*^^*)」
未知とは恐怖だ。それ故にこの男のクエストに強引に同行したが、私が感じた恐怖はいや増すだけであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます