第305話 フォルトVSベクルス

「さあ、見せてくれよ! あのドン・ガーネスを倒した男の実力を!」


 飛竜の種の効果でドラゴン人間となったベクルスは、翼を羽ばたかせながら挑発をしてくる。イルナを倒したことで調子に乗っているな。


「いくぞ」


 俺は静かにそう告げて、龍声剣に魔力を込める。

 そっちが飛竜の種を使って強化してくるというなら、こっちは龍声剣と破邪の盾、そして天使の息吹――三種の神器で挑む。


「食らえ!」


 ベクルスは口を大きく開けると、そこから炎を吐きだした。

 だが、その程度の攻撃ならば破邪の盾で防げる。


 普段は腕輪になっているが、魔力を込めることで光の盾となって俺を迫りくる炎から

守ってくれる。

 

「ほお、そいつが噂の攻撃を無効化する盾か。情報通りだな」


 攻撃を防がれたというのに、ベクルスはどこか嬉しそうだった。言葉の端々に余裕を感じさせる。それは事前に俺の持つアイテムの効果を知っていたからだろう。さすがにこの辺は入念というか、準備がいい。


「だが、自動的に発動するわけではないというのが痛いところだな」


 そう言うと、突然ベクルスの体が宙に浮く。

 ヤツの背中に生えた大きな翼は飾りではない。

 あれでちゃんと飛べるようだ。


「そいつがある限り、君に攻撃を加えるのは難しそうだが――あくまでもそれはこちらの動きを目で追えるレベルだからできたこと」

「何っ?」

「君の反応を超えるスピードで迫った時……どう言う反応を見せてくれるかな?」


 言い終えた直後、上空にいたベクルスの姿が忽然と消える。

 

「っ!? 消えた!?」


 いきなりいなくなってパニックとなっていたら、


「気をつけてください、フォルトさん! 敵は猛烈なスピードで辺りを飛び回っていますよ!」


 ジェシカの叫び声が耳に届く。

 猛烈なスピードで……俺に防御をさせないつもりというわけか。

 それなら常に破邪の盾の効果を出せるようにしておきたいのだが……こいつに魔力を消費しすぎると、龍声剣に使う分の魔力まで失ってしまう。

 

 防御か攻撃か。


 俺は究極の二択を迫られた。

 おまけにのんびりと考えている暇はない。


「おらぁ!」

「ぐあっ!?」


 叫び声が聞こえた直後、右わき腹に強烈な痛みが走る。見ると、まるで鋭い刃物で切られたかのような傷跡ができており、そこから出血をしていた。


「フォルト!」

「フォルトさん!」

「今助ける」


 ミルフィとマシロが叫び、トーネが俺を助けるために飛びだす。

 ――けど、俺はそれを手を差し伸ばすことで制止した。


「大丈夫だ……まだやれる」


 ここで退くわけにはいかない。

 みんなのためにも、次の攻撃でなんとか食い止めなくては。

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