第304話 飛竜の実
聖都に忍び寄るエスパルザの魔の手。
先陣を切って攻めてきたのは、ヤツの側近であるベクルスであった。
おまけにベクルスは《飛竜の実》と呼ばれる激レアアイテムを使用。
その効果は――
「おっ……うおおおおおおおおおお!」
あの種を食べた途端、ベクルスの体に大きな変化が見られるようになった。全身は赤い鱗で覆われ、背中から翼が生える。顔も徐々に爬虫類系のそれに代わり、手足の爪も大きく、そして鋭くなる。
「リ、リザードマン!?」
ベクルスの姿は二本足で立つ巨大なトカゲの姿――いわゆる、リザードマンというモンスターへと変身していた。
しかし、ところどころに人間だった頃の名残がある。
その最たる部分は知性だろう。
「いいなぁ……この姿はいつ変わっても力が溢れてきてたまらねぇ」
声もさっきまでと違う。
より低く、おっかなさが増していた。
「さて……では――」
飛竜の種の効果でリザードマンと化したベクルスがこちらを一瞥する。
次の瞬間、ヤツの姿が消えた。
「えっ!?」
何か魔法でも使ったのか。
それにしては一切魔力をかんじなかったのだが。
困惑していると、すぐ近くで強烈な衝撃音が聞こえてきた。
「うわっ!?」
何事かと回避行動を取ってから衝撃音のあった場所へと視線を戻す。そこでは、イルナとベクルスが激しい拳の打ち合いを繰り広げていた。さっきの衝撃音の正体はふたりが殴り合う音だったのか。
「きゃっ!?」
激しい攻防の末、パワー負けしたイルナが吹っ飛ばされる。
「イルナ!?」
「大丈夫よ、これくらい!」
気丈にも立ち上がるイルナだが、相当なダメージを負ったらしくすぐに膝から崩れ落ちてしまった。すぐにミルフィが駆け寄って回復魔法を使用し、イルナの救護に務める。
一方、ベクルスの方も無傷ではなかったらしく、脇腹を押さえながらも笑みを浮かべていた。
「なかなかやるな、お嬢ちゃん。腕っぷしもさることながら、度胸がいい。リーダーであるフォルトを守るために飛びだしてきて俺と殴り合う選択を取るとは」
「なっ!?」
そうだったのか……さっき、姿が消えたように見えたのはヤツの強靭な瞬発力によって一瞬のうちに距離を詰められたから。メンバーの中でいち早くその事態に気づいたイルナは、ヤツの標的だった俺を助けるために戦いを挑んだのだ。
これにはウィローズたちテンペストの面々も驚きを隠せなかった。
それほどまでに、イルナの格闘レベルが上がっているというわけだ。
……でも、彼女は俺の不甲斐なさによって傷を負った。
必ずやり返してやるからな!
「どうやら本気になったようだな。楽しめそうだ」
ベクルスは自分と同等の力を持つイルナを倒して調子に乗っている。
目にものを見せてやるぜ!
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スローライフな新作をはじめました!
【噛ませ王子は気ままな辺境暮らしを望む! ~悪役王子に転生した直後に追放されたので、田舎暮らしを楽しみます~】
https://kakuyomu.jp/works/16817330652651184226
是非、読んでみてください!
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