第303話 解錠士《アンロッカー》として

 ついに姿を見せたエスパルザの側近――ベクルス。

 ウィローズ率いる《テンペスト》の面々が新たに加わり、勢いに乗っている俺たちであったが、ヤツの余裕の態度がどうにも気になって攻め込めずにいた。


「賢いねぇ、君たち。もっと若さと勢いに任せてグイグイと来ると思ったのに。これじゃあこちらの予定が狂ってしまうねぇ」


 俺たちがすぐに仕掛けなかったのは向こうにとっても誤算だったらしい。

 しかし、ベクルスの態度から余裕さは消えていない。

ただ俺たちを煽り、単調な動きになったところへカウンターを決めるという戦法だけではなさそうだ。


「ベクルス……おまえたちの狙いは何なんだ?」

「それはむしろこちらが聞きたいところだけどねぇ……なぜ君たち――いや、この場合は王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーに匹敵する実力を持つフォルトくんだけに尋ねた方がよさそうだ」


 ……こちらの力はすでに調査済みというわけか。

 当然だろう。

 でなければあのような余裕たっぷりの態度にはならないはずだ。


「君のその力があれば、一生何事にも苦労することなく幸せな日々を送れる。君だけじゃなく、解錠士アンロッカーの中でも上位の実力を持つ者には相応の対価としてこれは約束されるべきなんだ――というのが、うちのボスの考えだね」

「あんたのボス……エスパルザか」


 ドン・ガーネスと並ぶ世界的な実力者。

 王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーに並ぶ力を持ちつつ、その力を悪用して人々を苦しめ、私腹を肥やし続けているという。

 かつて戦ったドン・ガーネスは巨大な町をつくり、そこを自身の楽園としていた。エスパルザも同様に、これまでに得た莫大な報酬を元手に大犯罪組織を作りあげ、王として君臨している。


 そこを拠点に好き放題暴れ回り、被害を受けた人たちは数えきれないほどだ。中には再起不能に追い込まれた者もいると聞いた。


「今からでも遅くはない。聖女ルナリアのもとから去り、俺たちと一緒に幸せな日々を謳歌しないか?」

「……俺には、あんたらのやっている生活がとても幸せなものであるとは思えない」

「そりゃあ残念だぁ。感性の違いってヤツかねぇ?」


 ベクルスは頭をポリポリとかき、


「ならばここで死んでもらおう」


 懐から取りだした木の実のような物を口に含んだ。


「っ!? あれは!?」


 その行為に驚きを見せたのはウィローズであった。


「な、何か知っているのか、ウィローズ」

「一蹴だけしか見えませんでしたが……今、あの男が口にしたのは【飛竜の実】だと思われますわ」

「ひ、【飛竜の実】?」

「カタログにヒットしました!」


 そう叫んだのはジェシカだった。

 気になる中身は――



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アイテム名 【飛竜の実】

希少度   【★★★★★★★★☆☆】

解錠レベル 【882】

平均相場価格【1000万~2500万ドール】

詳細    【竜の力を宿すことが可能となる】


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「りゅ、竜の力って……」


 このアイテム……めちゃくちゃヤバい代物じゃないか!

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