第300話 エスパルザ一味

 聖都へと侵攻するエスパルザの一味。

 フォーバートさん率いる聖騎士団は敵の罠にハマって現在この聖都を離れている。そのため、ルナリア様を守る役目を残った俺たちが迎え撃つこととなった。


 現場へと到着すると、そこにはこちらを目指して進む集団が。

 ヤツらが……エスパルザの配下か。


 近づいてくる者たちはいかにもって感じのチンピラたちばかり。ガラは悪いけど、とても強そうには見えなかった。なんというか、威圧感ってものがないんだよな。


「なんだぁ、おまえら?」

「ひょっとして、聖都の防衛のために出てきたのか?」

「ぎゃはははっ! こいつぁ頼もしい味方だなぁ!」


 完全にこちらを舐めているな……まあ、向こうからすれば武器こそ持っていても年齢的には十歳以上離れている子どもだろうし。

そもそも人数が違いすぎる。

こっちは六人だけど、向こうは少なく見積もっても五十人はいるだろうか。仮に俺たちがあいつらと同じくらいの年齢だったとしても、この人数差はそう簡単に覆せるものではない。


 ――ただ、俺たちはただの子どもじゃない。


 それをこいつらに分からせないとな。

 

「おら! とっととこいつらを蹴散らして聖都に雪崩れ込むぞ! 今なら聖騎士団もいないからやりたい放題だ!」


 スキンヘッドの大男が叫ぶと、他の仲間たちも雄叫びをあげながら突き進んでくる。


「やるぞ、みんな!」

「任せなさい!」


 先手を取ったのはイルナだった。

 聖女の拳を装備した彼女の打撃は一発で十人以上の屈強な男たちを吹き飛ばすほどの威力がある。

 イルナの強烈な先制攻撃により、男たちの戦意は一気に削がれた。


「ひ、怯むな! 相手はガキだぞ! さっさとぶっ殺せ!」


 なんとか気力を振り絞ろうと声を張り上げるが、それで結果が変わるほど俺たちはやわじゃない。俺もイルナに負けないよう、手にした龍声剣へ魔力を込めるとヤツらを蹴散らすため、炎魔法を最大威力で放つ。


「「「「「ぐあああああああああっ!?」」」」」


 俺とイルナの連携攻撃により、エスパルザの一味はさらに数を減らしていった。


「な、何なんだ、このガキどもは……」

「ガキ? ――ま、まさか、こいつら……あのドン・ガーネスを倒したっていうガキどもじゃないのか!?」


 スキンヘッドの大男が叫ぶと、周りのチンピラたちの視線が一斉にこちらへと向けられた。

 どうやら、今頃になって俺たちのことに気づいたらしい。

 ――しかし、向こうにも退けない理由はあるらしく、まだ交戦の意志が残っている者もいるようだ。


「まもなくこっちにも援軍が到着する! それまで耐えろ!」

「あら、援軍が来るのはあなたたちだけではありませんのよ?」


 突然、聞き慣れた女の子の声がした。

 声のした方向には、


「ウィローズ!」

「お久しぶりですわね、みなさん」


 女性のみで構成された冒険者パーティーの《テンペスト》をまとめるウィローズがいた。


「な、なんだ、てめぇは!」

「あなた方の邪魔をする者といえば分かりやすいですか?」

「ちっ! こいつらの仲間か!」

「そうですわ。あっ、ちなみに、あなたたちのお仲間さんはすでにわたくしたちが蹴散らして聖騎士団に身柄を預けておりますから待つだけ無駄ですわよ?」

「何っ!?」


 さすがはウィローズ。

 どうやら、戦わずして決着はついたようだ。

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