第299話 奇襲作戦
突然謎の光に包まれた女神の鍵。
動揺する俺たちを尻目に、まるでこうなることが事前に分かっていたのではないかと思うくらい冷静な口調でルナリア様は、
『待っていましたよ……鍵を継ぐ者よ』
そう告げたのだ。
「か、鍵を継ぐ者……?」
「正しい心を持った者でしか、その鍵の力は発揮できません。それでも、あなたはこれまでにたくさんの《閉ざされたモノ》をその鍵で解錠してきました。――しかし、まだ鍵は完全な姿ではなかったのです」
「完全な姿じゃなかった……?」
とても信じられない言葉だった。
これまでのことを頭の中で振り返ると……あれでまだ完全に力を解き放っていなかったのかと驚かされる。
いや、そもそも、どうしてルナリア様にそれが分かるんだ?
彼女が
もっといろいろと話を聞きたかったのだが、ここで思わぬ事態が発生する。
「大変です!」
俺たちのいる部屋に、甲冑を身につけた聖騎士団のメンバーと思われる男性が飛び込んできた。
「何事だ! 騒々しいぞ!」
教会関係者のひとりが声を荒げるも、騎士の状態を見て事の重大さに気づいた。
その重大な事態とは――
「エスパルザの一味が奇襲を仕掛けてきました!」
「なっ!?」
室内は一瞬にして緊張に包まれた。
フォーバートさんも危惧していたが……あっちは囮だったのか。
「フォルト!」
「行きましょう、フォルト!」
俺よりも早く動きだしたのはイルナとミルフィだった。それ続いて、ジェシカ、マシロ、トーネの三人も表情が引き締まっている。……みんな、臨戦態勢に入ったみたいだ。
「よし……俺たちがそいつらを食い止めます!」
「だ、大丈夫なのか?」
「任せてください!」
心配そうにしている教会関係者にドンと胸を叩いて断言する。まだまだルナリア様には聞きたい話がたくさんあるんだ。それを邪魔するエスパルザ一味は、ここで蹴散らしておかないと。
「みなさんは俺たちが出ていった後で結界魔法を展開させてください。もしかしたら、第三の部隊がどこかに潜んでいるかもしれません」
「わ、分かった」
念のための用心を促してから、俺たちは敵を迎え撃つために現場へと急行する――と、
「お待ちください」
大聖堂を出ようとした俺たちをルナリア様が呼びとめる。
そして――胸の位置で手を握り合わせると、そのまま目を閉じた。
「あなた方にご武運を……」
ルナリア様は、俺たちの勝利を祈ってくれたのだ。
「必ず勝って戻りますよ」
俺はそう告げると、再びみんなと一緒に駆けだした。
今――聖女を守る大きな戦い――聖戦の本当の幕があがる。
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