第297話 聖女ルナリア
ついに聖女ルナリア様と顔を合わせる時が来た。
俺たちは緊張しながらも、大聖堂にある彼女の部屋へと通される。そこは厳重な守りとなっており、まるで一国の国王に謁見するような緊張感があった。
……いや、相手はあの聖女ルナリア様だ。
世界最高峰の
そんな人と顔を合わせるのだから、緊張しないはずがない。
「さあ、どうぞ。こちらです」
気持ちの整理がつかぬまま、通された部屋――そこは信じられないくらい広く、それでいて豪華な造りとなっていた。まさに聖女が暮らす空間としては申し分ないと言える。
――で、肝心のルナリア様だが、
「ようこそ。あなたが噂の
「は、はい!」
緊張もあって、思わず声が裏返ってしまった。
だが、それ以上に……オレンジ色の髪に、すべてを見通しているかのような済んだ青い瞳……ルナリア様が想像していたよりもずっと美人だったことに驚きを隠せない。
「そんなに緊張しないで。さあ、あなたたちもこちらへ」
ルナリア様はニコッと微笑んで俺や仲間たちを部屋の奥へと招き入れる。
そして、部屋の中心に設えられイスへと腰かける。目の前にある大きなテーブルにはすでにお茶の用意がされており、ルナリア様が腰かけると身の回りの世話係をしている女性がお菓子を持ってきた。
「フォーバートの話では、あなた方はこの大聖堂を守るために残ったとか」
「え、えぇ、もしかしたら敵の陽動という可能性もありますので」
「相変わらずフォーバートは慎重ですね」
何気ない会話ではあるものの、なんだか空気が張り詰める――けど、せっかくルナリア様がお茶に誘ってくれたのだがら、ここはもっと自然体でいなければ。
ふと何気なくルナリア様へ視線を向けた時、俺を妙な既視感が襲う。
ルナリア様の顔……どこかで見たような?
「あっ」
思わず声に出してしまい、みんなからの視線を集める。最初は誤魔化そうとしたけど、やっぱり、俺の抱いた疑問を共有しておいた方がいいだろうと判断し、俺はあの女神の鍵を取りだした。
「これは俺が愛用している鍵なんですが……これに描かれている女性が、ルナリア様によく似ているんです」
俺たちが女神と呼んでいる女性の顔。何かを祈るように手を合わせて目を閉じているのだが、きっと真正面から見たら瓜二つだと思うんだよな。
鍵を目にしたルナリア様は、別段驚く様子もなく眺め続け……やがてそれを俺へと返すとこう切りだした。
「その鍵を手にしてから、あなたの人生はどのように変わりましたか?」
「えっ?」
「知りたいのです……鍵の力を手に入れてからのあなたの人生を」
な、なんだ?
どういう意味なんだ?
ルナリア様の狙いはよく分からないけど、知りたがっているのなら教えた方がいいのだろうな。別に隠すようなことでもない。
俺はお茶を飲みながら、これまでの冒険の数々をともに体験してきた女性陣の解説も交えながら説明していく。
その間、ルナリア様はとても楽しそうにしていたのだった。
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