第296話 大聖堂でのひと時
「一体何があったんですか?」
どこか慌てた様子のフォーバートさんは、乱れた呼吸を整えてから話し始める。
「エスパルザの一味と思われる集団が、聖都近くに集結しているという情報が入った」
「えっ!? も、もう攻め込んでくる気ですか!?」
俺たちが話しを聞いてから一日しか経っていない。
フォーバートさんの話では、他にも協力者を集めてから守りを固める予定だったが……あっちはまるでこちらの動向を見抜いているかのように手際が良いな。
「我らはこれより防衛のため兵を派遣するつもりだ」
「俺たちも行きます!」
まだこちらの体勢が整っていない状態で敵に攻め込まれてしまっては、対策も何もできない。せめて、周辺を嗅ぎ回っているというエスパルザ一味を追い返すことができれば、少し状況も変わるだろう。
だが、フォーバートさんは俺たちを止めた。
「君たちにはこの聖都に残ってもらいたい。いざという時のための最終防衛ラインとしてその力を振るってもらいたいのだ」
「わ、分かりました」
どちらかというと、そちらの方が重要なポジションっぽい。そう考えると、めちゃくちゃ気合が入るな。
フォーバートさんは頼りにしている部下たちをエスパルザの配下と思われる集団がいる場所へと派遣。
当初は警戒態勢を取りつつ、相手が敵対行動を取ったら相応の対処をするつもりでいるらしいが……聖騎士団が動きだしたと知れたら、向こうは強硬手段に打ってでてくるかもしれない。
フォーバートさんが出ていった後、俺たちは大聖堂にある中庭へと集まっていた。
「いよいよか……」
「まだ相手がエスパルザの一味って確定したわけじゃないわ」
「あ、ああ」
緊迫した空気の中、イルナは冷静だった。
俺たちも、あのガーネス・シティでの戦いを生き残ってきた――そういう経験をしているため、前よりも落ち着いているつもりでいたが……これからどうなるのか、そういった不安ももちろんある。
「みんな、できる限り戦闘の準備をしていこう。もしかしたら、ここがあのガーネス・シティのようになるかもしれないからな」
みんなにそう呼びかけると、全員が静かに頷いた。
それから、俺も龍声剣を手にする。
こいつがいてくれるから、戦う勇気が出てくるんだ。
「本当に立派な剣ね」
剣の手入れをしようとしたら、そこにミルフィがやってくる。
「うん。今でも、こんな凄いアイテムがあのダンジョンにあったなんて本当に信じられないよ」
「本当ね。でも、この剣があったから……フォルトは助かったのよね」
「そうだな」
思えば、あの時は本当に絶望のどん底だったからな。
よくここまで来られたものだと思うよ。
しばらく中庭で過ごしていると、
「あの」
突然、誰かが俺たちへ声をかけた。
振り返ると、そこにはひとりのシスターさんが立っていた。
「何か?」
「いえ、その……ルナリア様がぜひともあなた方にお会いしたいと」
「えっ!?」
思いもよらぬ言葉に、俺はたまらず叫んでしまった。
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