第294話 聖戦

「ヤツが……エスパルザが宣戦布告をしてきたんだ」

「せ、宣戦布告!?」


 俺たちは思わず顔を見合わせる。

 世界最高の解錠士アンロッカーと名高い聖女を相手に戦いを挑むらしい。

 でも……そういえば、エスパルザはドン・ガーネスに匹敵する戦力を有しているという話だったな。今はそのガーネスがいなくなったため、ここで一気に自分の名を広めようとしているのか?


「聖女ルナリア様を失うことは、この世界から光が失われるも同義……ガーネスを倒した実績のある君たちにも、協力をしてもらいたいのだが」

「そ、それは……」


 個人的にはその話に乗る気だった。

 ルナリア様に直接会ってみたいという気持ちもあったし、何よりエスパルザを倒せば冒険者にとってよりよい環境となる。


 ――が、俺たちはあくまでもパーティーで行動している。一応、俺がリーダーなので最終的な決定権があるにはあるのだが、他のメンバーにも意見を聞く必要があると判断したのだ。


 そのみんなの意見だが……どうやら、聞くまでもなかったようだ。

 全員が俺を力強い眼差しで見つめ、コクンと頷く。

 ……長い間、一緒に旅をしてきた仲間だ。

 こちらの考えは手に取るように分かるのだろうな。


「フォーバート団長……俺たちにも協力させてください」

「っ! ありがとう。君たちが加わってくれるのはとても心強い」


 正式参戦を表明したことで、フォーバートさんも安堵したようだ。


「ちなみに、俺たち以外にも協力を要請しているんですか?」

「名のある解錠士アンロッカーや冒険者パーティーには声をかけている。君たちの知るところで言うと……テンペストのリーダーを務めるウィローズやガーネス戦でも力を発揮したカタルスキー。同業の解錠士アンロッカーではバッシュやマルクスにも声をかけるつもりだ」

「そ、そうそうたる顔ぶれですね」

「彼らも君たちがここへ来ていると知れば、きっと協力をしてくれるはずだ」


 名前があがった面々とは確かに目指す場所が同じであり、ガーネス・シティでの決戦の際には一致団結して強大な敵と戦った、いわば戦友だ。


 そんな面々が再び集まる。

 ……なんだか、今度は物凄いことになりそうだ。

 それこそ、解錠士アンロッカーの未来をかけた戦いと言っても過言ではないほど。


「今のところ、近辺にエスパルザ一味の影は見られないが……ヤツらがここを目指しているというのは間違いない情報だ」

「俺たちもついこの前、エスパルザの配下であるベクルスに絡まれましたね」

「っ! ベクルス……ヤツも動きだしたか」


 ベクルスの名前を出した途端、フォーバート団長の顔が強張った。

 どうやら、個人的な因縁があるっぽいな。


 その後、俺たちはしばらく大聖堂で寝泊まりをすることとなり、いつ始まるか分からないエスパルザとの決戦に備えることとなった。


 今回もガーネス・シティの時と同様、かなり大規模な戦いが予想される。

 フォーバート団長や大聖堂関係者の間では、エスパルザとの決戦を【聖戦】と呼ぶようになっているという。


 聖戦、か。


 大袈裟な言い方じゃないかもしれないな。

 それくらい、今回の戦いの背後には並々ならぬ決意のようなものがうかがえたのだ。

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