第293話 大聖堂での再会

 聖女ルナリア様に会える。

 そう思うと、進む速度は自然と上がっていった。

 やがて大聖堂の入口付近へたどり着くのだが……どうも様子がおかしい。大勢の人が入口の前で足止めを食らっているようなのだ。


「何かあったのかしら……」


 不安そうな声を漏らすジェシカ。

 確かに、あまり穏やかな空気じゃないな。

 不思議に思いながら近づいていくと、門の前には武装した兵士たちの姿があった。あれは……間違いない。ドン・ガーネスを倒す際、ガーネス・シティに駆けつけ、力を貸してくれた聖騎士団のメンバーだ。


 彼らが大聖堂の入口をふさいでいるということは……中で何か起きたのか?

 心配がさらに積み重なっていく中、近くにいた中年男性が叫ぶ。


「どうなっているんだ! なぜ大聖堂に入れない!」


 これがきっかけとなり、周りからも「なぜ!」、「どうして!」と疑問を投げかける声が続出。


「大聖堂に入れないみたいね」

「みたいだな」

「理由はなんなのかしら……」


 イルナとミルフィと状況を見守っていた時、トントンと誰かが指先で俺の肩を叩く。振り返ると、そこにいたのはトーネだった。


「トーネ? 何かあったのか?」

「あれ」

「どれ?」


 トーネが指さした方向。

 ひと際大きなステンドグラスがある部屋だが、そこに騎士や大聖堂関係者と思われる人物たちが集中している。どうやらあそこで何かあったようだ。


「行ってみます?」


 マシロの言葉に、俺は黙って頷いた――が、動きだそうとした時、こちらに声をかけてきた者がいた。


「君は……フォルトくんか?」

「フォーバートさん!」


 聖騎士団の団長を務めるフォーバートさんだ。

 彼とはドン・ガーネスと一緒に戦った経験もあり、顔見知りだった。


「ついに聖都市へたどり着いたか」

「はい。それで、聖女ルナリア様に会いたいと思って……」

「む? そうか……だが、残念ながら今は――そうだ」


 フォーバートさんはポンと手を叩くと、俺たち全員を見回してから話し始める。


「ガーネス・シティにいたメンバーは全員揃っているようだね。君たちならば……信頼もできるし、協力を要請したい」

「協力? 一体何ですか?」

「……この世界に大いなる変革をもたらすことだよ」


 あまりにもスケールの大きな話に、俺たちは思わず顔を見合わせる。


「そ、それって……具体的にはどういう?」

「見てもらえば分かるが、今ちょっとここは立て込んでいてね。その原因はとある解錠士アンロッカー絡みなんだ」

「そ、それって……」


 聖女ルナリア様絡みで、フォーバートさんが顔をしかめるような反応をしてしまう相手と言えば……《ヤツ》しかいない。


「もしかして、今回の騒ぎの元凶は……エスパルザですか?」

「その通りだ」


 間髪入れずにフォーバートさんは首を縦に振った。

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