第290話 聖都へ

 レニーを精霊界に帰すというクエストを達成した俺たちは、いよいよ旅の終着点と定める聖都へと向けて出発する。


 少々遠回りになってしまったが、旅は順調に進み――とうとう聖都をこの目で拝める距離にまで近づいた。


「見てください! あれが聖都ですよ!」


 最初に発見したのはジェシカだった。

 その指さす先にあるのは、これまでに見たことがないほどの大都市であった。


「ここが……聖都……」


 聖女ルナリアが統治すると言われているこの場所は、都市でありながら他の国からの干渉を受けない独立国家のような扱いを受けている。

 ――ていうか、ほとんど外部に情報が出ないんだよなぁ。


 一応、普通の都市として機能しているし、何か特別に制限を設けているわけでもない。けど、聖都を訪れた人々は口を揃えて「あの場所は特別」と話す。

 バッシュさんやマルクスさんは、ルナリア様の考える解錠士アンロッカー協会の設立に賛同しているって言っていたけど……超一流であるあのふたりが認めるほどの実力とは、一体どれほどのものなのだろう。

 

「…………」


 不意に、俺は女神の鍵が気になって取りだす。

 俺の人生をガラッと変えてくれた、奇跡のアイテム。


 こいつのおかげで、俺は三種の神器を手に入れることができた。

 これまで、いろんなダンジョンでさまざまな敵と戦ってきたけど……この鍵がなければ勝つことはできなかっただろう。というか、最初のあのダンジョンで野垂れ死にしていたはずだ。


 その鍵が……聖都へ近づくたびに、なんだか俺に訴えかけているような感覚があった。魔力が出ているとか、そういう直接的なものではなく、頭の中に直接物凄く小さな声でかたりかけられるような感じだ。


 うまくは説明できないけど……とにかく、いつもとは違った様子だった。


 もしかしたら――聖都にはこの鍵の謎を解くヒントがあるかもしれない。

 そして、そこには世界最高の解錠士アンロッカーとされる聖女ルナリアが大きく関与している。


 根拠なんてありはしないけど、なぜだかそんな気がしてならないのだ。


「どうかしたの、フォルト」

「っ! い、いや、なんでもないよ、ミルフィ」

「ほらほら! ボサッとしてないで早くいくわよ!」

「ふふふ、はしゃぎすぎですよ、イルナさん」

「で、でも、私もなんだか凄くドキドキしています」

「私も」


 ミルフィ、イルナ、ジェシカ、マシロ、トーネ――こうして、みんなと一緒に楽しく旅ができているのも、この鍵のおかげだ。


 解錠士アンロッカーとしての道を示してくれたこの鍵の正体を見極める。

 俺がずっと胸に秘めていたその答えが……きっと聖都にはある。


「――よし! いこう!」


 すべての謎を解き明かすため、俺たちはいよいよ聖都へと乗り込む。

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