第286話 謎の騎士

「えぇっと……あなたは?」

「申し遅れました。私は聖騎士団のメンバーでグレッグといいます」


 グレッグと名乗った男性は、やはり聖騎士団の一員だった。

 さらに、彼の後方から続々と騎士たちがやってきて、誘拐犯たちを拘束していく。どうやら、これが目的だったらしい。


「それにしても驚きました。ようやく精霊たちを誘拐している者たちの動向を捉えたと思ったら、あなたたちが先回りをされていたとは……さすがはあのドン・ガーネスを倒しただけのことはありますね」

「いや、これに関してはただの偶然ですよ」


 俺たちはレニーを故郷である精霊界に帰そうとここまで来ただけで、誘拐犯のグループと鉢合わせたのは本当にただの偶然だった。

 ……しかし、グレッグさんの口ぶりからするに、彼もまたガーネス・シティでの決戦に参加していたのか。


「ところで、精霊をさらっていたあの男たちはこれからどうなるんですか?」

「監獄送りですよ。その前に、精霊を売った相手についてもすべて自供してもらう予定ですけど」


 にこやかに語るグレッグさんだが……その笑顔はどことなく怖い。

 


「では、我々はお先に失礼しますよ」


 誘拐犯たちを護送用の馬車に収容し終えると、グレッグさんは再び笑顔で俺たちに頭を下げながらそう言った。


 ――さらに、


「あなたたちを聖都で待っていますよ」

 

 最後にそう告げて、グレッグさんとその仲間たちは引きあげていった。


「……な、なんだか、変わった人でしたね」


 顔を引きつらせながら、ジェシカは語る。正直、俺もまったく同じ感想を抱いたし、他のみんなも同じような反応だった。


「うまく言えないんだけど、何かを隠しているような感じがしたわ……ね? ミルフィ」

「そうね……なんの根拠もないのに疑うのはよくないことだけど……」


 悪事を働くどころか、むしろ悪党たちを取り締まって連行していったグレッグさんなのだが……俺もどちらかというとイルナやミルフィ側の意見だ。

 まあ、疑いすぎるというのもいかがなものかとは思うが、それでもやっぱり拭えない予感めいたものがある。


 ――っと、それはひとまず置いておくとして、


「この泉が精霊界へつながっているっぽいんだよなぁ」


 わずかに魔力が漏れている泉。

 ここが精霊界と何かしらの関係を持っているのは間違いなかった。


 しかし……問題はその方法だ。

 精霊誘拐事件が多発していたという理由もあってか、周りに精霊たちの気配は一切感じられないし、もしかしたら精霊界への道を閉じてしまった可能性も考えられた。


 もしそうだとしたら――レニーはもう精霊界に帰れないということか。


「…………」


 レニー自身、それが分かっているのか、口数が少なくなる。

 どうにかしたいところだが、と悩んでいた――まさにその時だった。


「っ!?」


 突如現れた強力な魔力に反応して、全員が一斉に振り返る。

 そこには――

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