第284話 精霊の里
翌朝。
俺たちは精霊の里を目指すため、ランデスさんやシャディさんたちとはここでお別れとなる。
「旅の無事を祈っておるよ」
「俺たちもです」
最後に、互いのパーティーのリーダーである俺とランデスさんは握手を交わし、それぞれ別の方角へ向かって進みだした。
「賑やかな人たちだったわね」
「家族でパーティーを組むっていうのも楽しそうですね」
馬車での移動中、イルナとジェシカのふたりがそんな話題を切りだす。
確かに、親子ってなると普通の冒険者パーティーとはまた違った絆ができるよな。イルナの場合は父親であるリカルドさんがリーダーを務める霧の旅団に生まれた時から所属しているため、よりそれを強く感じるのだろう。
不安要素としては……精霊がさらわれる事件が起きているという点か。
しかもバックには
……何もなければいいんだけど。
冒険者いえば、リカルドさんたちは順調に大迷宮のダンジョンを攻略できているのかな。
聖都を訪れた後に、一度戻って近況報告に行くとしよう。
精霊の里を目指し、移動を始めてから数日後。
その間もいくつかの町を経由しつつ、本来の目的地だった聖都からも離れてしまったが――ついにその場所へとたどり着いた。
「ここよ! パパたちと一緒に来たのは、間違いなくここだったわ!」
イルナはハッキリと断言した。
かつて、霧の旅団が訪れたという精霊の里……そこは美しい森の中にあった。静寂に包まれ、穏やかな時間が流れるその場所。近くには泉もあって、精霊たちの集まる場としては雰囲気満点だ。
さて、肝心のレニーはというと、
「…………」
泉をジッと見つめたまま、直立不動。
同じく歌の精霊であるマシロも、泉へ顔を向けたまま動かない。
ふたりとも、何かを感じ取ってはいるようだが……それは俺たちも同じだ。
イルナやミルフィあたりも勘づいているっぽいけど、先ほどからこちらを監視するような視線が注がれている。
恐らく、精霊たちがどこかに隠れ、こちら側の動向を探っているらしい。
ただ、俺たちがここを訪れた目的はレニーを仲間の精霊たちのもとへ帰すこと。精霊をさらおうとしている連中とは違うと気づいてくれればいいのだが……こちらからアプローチをかける術がないからな。
「話しかけてみましょうか?」
「それしかないか――うん?」
次なる行動を起こそうとした時、別の気配を感じる。
耳を澄ましてみると……複数の人間が話す声がこちらへ近づいているようだ。
「誰かがこの森にいるのか?」
「たぶん……厄介な存在」
そう呟いたのはトーネだった。
「どうしてそう思うんだ?」
「勘」
あっけらかんと答えるが……彼女の勘は当たるからなぁ。
それに、俺もまったく同感だったからタチが悪い。
こちらへと近づいてくる者たちは……ひょっとして、精霊をさらっているという実行犯ではないのか?
とにかく、俺たちは有事に備えて武器を取り、戦闘態勢を取る。
果たして……近づいてくる者たちの正体とは――
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