第281話 楽しい食事会

 精霊の里を目指す旅の途中で出会った冒険者パーティー。

 そのリーダーは老紳士のランデスさん。

 さらに、彼の補佐役としてシャディさん。

 他のメンバーは総勢で二十人ほど――だが、ここ思わぬ新事実が発覚する。


「えっ!? みなさん家族なんですか!?」

「そうじゃ。さっきのシャディはワシの孫なんじゃよ」


 なんと、パーティーメンバー全員がランデスさんの親族だという。


「そういえば、父からあなたの名前を聞いたことがありました。家族でパーティーを組んでいて、とても仲が良く、何より実力もあるって」

「ほっほっほっ! 君の親父さんたちには到底かなわんがな」


 イルナが【霧の旅団】のメンバーであり、しかもリーダーであるリカルドさんの娘だと分かると、ランデスさんのテンションが大幅に上がった。

 なんでも、まだ新米冒険者だった頃のリカルドさんと何度かダンジョンで会ったことがあるらしく、その時にアドバイスもしたらしい。その話を聞いたイルナも、父が尊敬する冒険者のひとりにランデスさんの名前を挙げていたことを思い出し、こちらもテンションが上がっていた。


 一方、シャディさんたちも父親であるランデスさんがよく「【霧の旅団】のリーダーに冒険者としての心構えを教えてやったのは自分」という自慢話が事実であることを知って驚いていた。


「まったく……実の父であり爺ちゃんでありひい爺ちゃんを疑うとは……」

「さすがにあの【霧の旅団】のリーダーと本当に絡みがあったなんて思わないわよ」

「これでも昔はブイブイいわせとったんじゃぞ!」


 ランデスさんの言う通り、イルナから教えてもらった情報によると、昔はかなり腕の立つ冒険者だったらしい。最近はかつてのような高難易度のダンジョン攻略からは身を引いて、後進の育成に専念しているのだとか。


「ワシの目から見たら、まだまだ若い者たちに教えなくちゃならんことがいっぱいあるからなぁ」

「なんだよ、親父。これでも俺たちはこの辺りだと結構な有名人だぜ?」

「そうともよ」

「バカモン! もう少し広い志を持たんか! それこそ、ここにおる者たちのように偉大な功績を残してこそ語られるべきじゃ!」

「へっ! 違ぇねぇ」

「さすがの俺たちでも、あのドン・ガーネスと真っ向からぶつかろうとは思わなかったからなぁ……いやぁ、ホントすげぇよ、あんたたち」

「い、いや、そんな」


 みんなからいろいろと声をかけられて、俺たちは恐縮しっぱなしだった。

 やがて話題はうちのパーティー編制に及ぶ。

 

「それにしても、君のパーティーは女の子ばかりだな」

「ま、まあ、成り行きというかなんというか……レニーに関しては正式なメンバーというわけではないですし」

「なら、これから男を新しく入れる予定があるのか?」


 この質問に対し、俺よりも先に答えたのはミルフィだった。


「今のところありませんよ。ね、ジェシカ?」

「ですよねぇ、マシロさん?」

「そ、そうですよね! トーネさん?」

「うん」

「いや、そこはあたしに回しなさいよ!」


 イルナからの鋭いツッコミが炸裂したところで、ドッと笑いが起きる。相変わらず息ピッタリだなぁ。レニーも横で果実ジュースを飲みながら感心しているよ。


「だはははっ! そうなると、将来的にはうちよりも大所帯になるかもなぁ!」

「えっ?」

「全員が君の子どもを産めば、あっという間にうちの人数を抜くってことさ」

「っ!?」


 い、いやいやいや!

 それはさすがにちょっと――


「「「「「…………」」」」」


 なんで黙るの!?

 結局、それからしばらくは微妙な空気が流れるのだった。

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