第277話 故郷への想い
ついに俺たちを封じ込めていた扉をこじ開けることに成功し、外へと脱出できた。
――脱出できたのは、俺たちだけじゃない。
「外だ……」
聖霊レニーも、数百年ぶりに外へと出ることができたのだ。
「うああああぁ……」
レニーはペタンとその場にしゃがみ込むと、ワンワンと大声で泣き始めた。そんな彼女を囲むのは一緒に外へと出てきた三体のマッスルスライムたち。もうすっかり懐いているなぁ――って、そうじゃない。
「大丈夫か、レニー」
泣きじゃくるレニーの手を取り、なんとか立たせる。
次から次へとあふれてくる涙を手で拭いつつ、レニーは真っ直ぐこちらを見つめて、
「あ、ありがとう……」
消え入りそうな声で、俺たちにお礼を言うのだった。
レニーを保護した俺たちは、そのまま宿屋へと戻った。
彼女が精霊であることを伏せつつ、詳しい話をするために部屋へと入る。
「落ち着いたか?」
「う、うん……」
一応、大勢で泊まるということで広めの部屋を取ったが……それでもちょっと狭かったかな。まあ、いざとなれば俺は床にでも寝ればいいし。
気を取り直して、レニーにこれまでのことを説明する。
「
「まあ、開けられない物を開けるのが、俺たち
それでも、さすがにあれくらい強固な扉をこじ開けられるのは限られた者たちだけだろう。
そんなことを思っていたら、頭の中にフォーバートさんが「注意しろ」と言っていたエスパルザという
かつて、町ひとつを支配し、各国王家にも太いパイプを持っていたドン・ガーネスに匹敵するほどの実力者だという。
きっと、そのエスパルザという男ならば、あの扉をこじ開けることができたのかもしれないな。
いずれ……対峙するかもしれないな。
っと、少し思考がずれてしまった。
問題はレニーがこれからどうするか、だ。
俺がそれを尋ねると、彼女は静かに語る。
「故郷へ……帰りたいな」
「故郷?」
精霊たちの故郷といえば――精霊界か。
しかし、あそこはそう簡単に行ける場所じゃないからなぁ。
同じ精霊で、しかも相当な実力を持った者ならば、きっとその精霊界へ行ける方法について知っているかもしれないのだけど……
「――うん?」
……いるじゃないか。
うちにも強い精霊が!
「マシロ……どうやら、君の出番らしいぞ」
「わ、私ですか?」
歌の精霊女王として覚醒し、あのドン・ガーネスを倒すのにも貢献したマシロ。彼女ならば、精霊界へ行く方法について何か心当たりがあるかもしれない――と、期待をしていたが、
「ご、ごめんなさい……精霊界への行き方は私も知らないです……」
ペコリと頭を下げるマシロ。
さすがに、そううまくはいかないか……自分が精霊だってことに気づいたのも割と最近のことだし。
さて、こうなったら……
「情報を得るためには、あそこを利用するしかなさそうだな」
みんなが一斉にこちらを向いて「あそこ?」と首を傾げる。
そう。
あそこと言ったらあそこなんだ。
…………………………………………………………………………………………………
新作をはじめました!
異世界転生×実は最強&万能主人公×物づくりスローライフ×ハーレム
「ざまぁもあるよ?」
【
https://kakuyomu.jp/works/16817139555862998006
是非、読んでみてください!
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