第275話 突破方法
精霊レニーは思いのほか呆気なく真実を口にした。
曰く、かつてこの近くにある村に住んでいた者たちと仲良く暮らしていたレニーであったが、どうもその村ではよくないことが立て続けに発生し、次第にそれは精霊という特別な力を持つレニーの仕業ではないかと疑われるようになったのだという。
だが、レニー自身は村人たちの心境の変化に気づくことはなく、いつものように子どもたちと遊ぶためこの場へと呼びだされたが――待っていたのは村の大人たちに事情を聞いて駆けつけたこの土地を治める国王の命により派遣された凄腕の魔法使いだった。
その魔法使いは、強力な結界魔法でレニーの動きを封じると、近くにあったダンジョン――つまり、この場所に閉じ込めたのだという。
それから百年以上、彼女はこの場所で暮らしていたのだ。
「それが……ダンジョンの真相……」
思わぬ事実に、鬼ごっこに参加していたイルナたちは複雑な表情を浮かべる。
すべてがバレたことで、レニーは大人しくなった。
まあ、薄々勘づいていたことだが、どうやら彼女の言っていたお宝というのもでっち上げのようだ。
詳しい情報を聞きだそうとしたが、泣きじゃくるレニーとはまともに会話ができそうにない。ミルフィとジェシカが必死に慰めているが、もうしばらく時間はかかりそうだ。
――ただ、これだけは確認しておきたい。
「レニー、ひとつだけ答えてほしい。――ここから出たいか?」
俺の問いかけに、レニーは相変わらず大泣きをしていたが、それでも頷くことでなんとか意思表示ができた。
……よし。
了承を得たことで――遠慮なく全力を出せる。
「どうするつもりなの、フォルト」
俺の様子が変わったことに気づいたイルナがこっそり尋ねてくる。
魔力によって入ることはできても外へ出ることの叶わないこの空間からいかにして脱出するのか――一見難しそうに見えるが、手段を問わないとなれば、アレが使える。
「
塔のダンジョンの最上階に隠されていた宝箱をこじ開けた切り札。
こいつでダメならかなり絶望的な状況だが……きっと突破できるはずだ。
「みんな、離れていてくれ」
レニーを見ていたミルフィとジェシカはともに塔のダンジョンを攻略しているため、これから何が起こるのか察することができた。
マッスルスライムたちも、俺の気配の変化から何かが起きると予測し、レニーを守ろうとしている。
逆に、トーネはあの鍵の力を知らない。マシロから説明を受けているようだが、それよりも非難を優先した方がいいし、きっと実際に見た方が早い。
「いくぞ……」
俺は魔力を鍵に込める。
すると、徐々に姿を変えていき、やがて巨大な鍵となった。
ただ、今回は塔のダンジョンの時とは違い、鍵穴が存在しない。
――いや、必要ない。
こじ開けるのはこの空間そのもの。
ここに風穴を開けることができれば!
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