第264話 暗闇の先にあったのは……

 リスクを冒す形になるが、都市遺跡の隠された秘密を暴くため、俺たちは装備を整えてさらに奥へと進むことにした。


 ここでもっとも気をつけなければならないのが、道のりが真っ暗だという点。一応、ランプは持ってきたのだが、それでもこちら側の視界が狭まっているのは事実。もし、暗闇でも自由に動き回れるモンスターがいるとしたら……それを注意しながら、少しずつ前進していく。


「視界が悪いから、なるべく離れないようにしていこう」

「それがいいわね」


 視界が悪いだけじゃなく、道も狭い。一筋縄ではいかないと予想はしていたものの、これは……思っていたよりも過酷な道のりとなりそうだ。


「うぅ……ちょっと不気味ですねぇ」


 マシロが怖そうにしていたので、俺は自分の腕を差し出す。


「怖かったら……掴まるか?」

「っ! ぜ、是非!」


 よほど怖かったのか、マシロは俺の腕に飛びついてくる。

 すると、


「それはいい案ね、フォルト」

「えぇ。みんながはぐれないよう、お互いに掴まり合いましょう」

「私もその案に乗るわ!」

「賛成」


 イルナ、ジェシカ、ミルフィ、トーネの四人はなんやかんや理由をつけて俺にしがみつく。――が、さすがにこの人数が集まると動きづらい。


「も、もうちょっと分散しないか?」

「それでは私が」

「きゃっ!? ちょ、ちょっと! どこを触ってるのよ、ジェシカ!」

「あっ、すみません。フォルトさんと間違えて……」

「待って。あたしのどこのサイズをフォルトと間違えたの? 怒らないから正直に言いなさい」

 

 何やら、背後から殺伐とした気配が伝わってくる。

 とりあえず冷静になるよう声をかけようとした――その時、


「っ!?」


 何者かの気配を察知する。

 視界を正面に向けるが、そこには何もいなかった。


「フォルト、今のって……」

「変な感じ」

「あぁ――何かがいるぞ」


 どうやらミルフィとトーネも感じ取ったようだな。


「みんな! 敵がいるかもしれ――」

「どうなの? ジェシカ?」

「い、いや、悪気があったわけじゃなくて……」

「まだやってたの!?」


 イルナとジェシカのゴタゴタはまだ続いていたようだが、さすがにそろそろ切り替えないとまずい。

 ――と、


「フォルト! 前方に明るい場所があるみたい!」


 ミルフィが叫びながら俺たちにそう教えてくれた。


「よし! とにかくそこへ急ごう!」


 俺たちは大急ぎで先へと進む。

 その間も、俺たちへ謎の気配が迫ってくる。姿を確認することはできなかったが、紛れもなくそこに何かは存在していた。


「あとちょっとだ!」


 必死に走ってたどり着いたそこは、今までの狭い道からは想像できないくらい広い空間であった。おまけに、ここにはヒカリゴケがあるみたいで、ランプがなくても周りがハッキリと見渡せる。


「こ、ここは……遺跡の内部か……?」


 構造からして、さっきまでいた都市遺跡と同じなんだろうけど……何か、雰囲気が違うんだよな。


「あっ! フォルトさん! あそこを見てください!」


 突然、何かを発見したジェシカが叫ぶ。

 指さす先にあったのは――扉だった。


「もしかして……ここが正解の部屋なのか?」


 俺たちは今、大図書のダンジョンに真の意味で挑もうとしていた。

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