第265話 意外な共通点

 暗くて狭い道のりを越えた先にまっていたのは――新たな部屋へと続く扉であった。


「行ってみよう!」


 俺たちはジェシカの見つけたその扉へと近づいていたったのだが、


「あっ!」


 距離が縮まることで徐々に明らかとなっていく扉の正体。それを知った時、俺たちの足は思わずピタッと止まった。


「これ……扉じゃないのか……」


 扉だと思っていたそれは、近くで見ると古代文字の彫り込まれている大きな石板であった。周りと色の違う石板が長方形にはめ込まれているように映ったため、思わず扉だと早とちりをしてしまったのだ。


「驚いて損しちゃったわ……」

「でも、これって何が書かれているのかしら……」


 ミルフィは文字を撫でるように触れる。

 すると、


「あら?」

「どうかしたのか、ミルフィ」

「いえ……よく見ると、石板の表面に小さな穴がたくさん開いていて……」

「えっ?」


 その指摘に驚きつつ、近づいてチェックしてみると……確かに、そこには古代文字とは別に穴が開いていた。大きさは小指くらいのもので、特に規則性は見受けられない。数も多く、正確な数字は把握できないが、少なくとも百個以上はある。


「何か意図があるのでしょうか……」

「古代文字と合わせて、とても興味深いですね」


 マシロとジェシカは真剣な面持ちで穴を見つめている。

 一方、俺たちは他に何か怪しい点はないか、周辺を調査してみることにした。



 ――一時間後。



「特に収穫はなし、か」


 古代文字の彫られた石板以外に、気になる点はなし。

 やはり、この都市遺跡の謎を解く鍵は、この石板に秘められていると見て間違いないだろう。


「どうする、フォルト。タイラーさんやマーガレットさんへ報告しに行く?」


 このままここにいても進展は望めないと判断したイルナが尋ねてくる。

 考古学の知識が皆無に等しい俺たちでは、この石板に書かれた文字や穴の意味を理解することはできないだろう。

 ……ただ、ひとつ疑問があった。


「タイラーさんたちは……本当にこの場所の存在を知らないだろうか」

「? どういうこと?」

「いや、ここまでの道のりって、そこまで複雑じゃなかったから……タイラーさんや他の冒険者たちが誰ひとりとして立ち入れなかったってわけじゃないと思うんだ」

「い、言われてみれば……」



 そこがどうにも解せない。

 考えられるのは、すでに誰かに発見されているが、それでもひとりとして謎を解くことができなかったということか。


 でも……そうなったらいよいよ手の施しようがなくなる。


「何かないのか……この石板の謎を解くヒントが……」


 腕を組み、ジッと石板を眺め続けていると――

 

「あれ? これって……」


 古代文字の中に気になるものを発見する。


「何かありましたか、フォルトさん」

「……古代文字の一部――ここ! ここにある三つの文字は……」


 俺はすぐさま女神の鍵を取りだした。


「こいつに彫り込まれているのと同じ文字なんだ!」


 そう。

 石板の中にある一部の文字は、俺の持つ女神の鍵に彫り込まれていた文字とまったく同じだったのだ。

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