第262話 隠された謎
遺跡を調査しているという老紳士――タイラーさんは、俺とミルフィを自分の研究室と呼ぶ場所へ連れて行ってくれた。
と、言っても、場所は出会った場所から歩いて一分ほどしか離れておらず、しかも研究室と呼ぶわりにそこは遺跡の広い隙間へ生活に必要な物を押し込んだだけであった。
――ただ、ここで俺たちは意外な再会を果たす。
「あれ? マーガレットさん?」
「やあ、やっぱり来たね。ドン・ガーネスを倒したあなたたちなら、このダンジョンの違和感に気づくと思ったわ」
大図書のダンジョンで出会った女性冒険者のマーガレットさんだった。
「こんなところで何を?」
「私はこの人の助手をしているのよ。――それより、ここへ来たということは、クイズに挑戦せず、遺跡を調べていたんでしょ?」
「ま、まあ」
その口ぶりからすると……マーガレットさんもおかしいと思って、遺跡を調べていたクチか。
「先に言っておくけど、私たちもまだ遺跡について何も分かっていない状況だからね」
「あっ、そうなんですね」
「露骨にテンションが落ちたなぁ……」
タイラーさんにはそう言われたけど……まあ、期待はしていたからね。
「周りには特徴的な魔法文字のようなものもあるんですが……」
ミルフィがそう尋ねると、タイラーさんの目がキラリと光る。
「いいところに目をつけたな。ワシらもあの魔法文字がこの遺跡の謎を解く鍵じゃとおもっとる」
「鍵……」
普通に鍵を開けるなら、
「ワシは主にあの魔法文字の解析と、周辺の調査を行っておるが……残念ながら、この遺跡がいつ頃にできたものかなど、詳しい情報についてはまだ何も得ておらんのじゃ」
「著名な考古学者にでも来てもらえれば即座に解いてしまうのかもしれないけど、こんな辺境のダンジョンに来る物好きなんて滅多にいないからね」
まあ、それはそうかもしれないな。
「でも、調べてみる価値はありそうですね」
「おぉ! 分かってくれたか!」
「他の冒険者は躍起になってクイズを解こうとしているけど、私はどれだけ進んでもあまり変化はないと思うのよね。終わりが見えないっていうか」
終わりが見えない――それは、最初のクイズに挑んだ際に俺が抱いた疑問とまったく同じだった。ただクイズに正解し続けるだけで激レアアイテムがもらえるとはどうしても思えなかったのだ。
「俺もマーガレットさんと同じ感想を抱きました」
「やっぱり? まあ、だからタイラーさんに見つかったんだろうけどね」
「仲間を集めて、もう一度詳しく遺跡周辺を調査してみます」
「了解!」
俺とミルフィは、一度他のみんなと合流し、タイラーさんとマーガレットさんの話を伝えようと思った。
未だに見えてこなかった、大図書のダンジョンの攻略法。
ただ単純にクイズをこなし続けていればいいというわけではない――その仮説が正しかったかどうか、これからハッキリする。
「なんだか、ヤル気が出てきたぞ!」
「私も!」
俺とミルフィは高鳴る鼓動をおさえつつ、みんなのもとへと走った。
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