第261話 都市遺跡調査

 大図書のダンジョンはクイズに正解し続けなければならない。

 その固定観念を拭い去り、他に可能性はないものか――俺たちはそれを求め、翌日はクイズに挑戦せず、都市遺跡を詳しく見て回ることに。


「クイズが出題される部屋は、かなりたくさんあるみたいね」

「少なく見積もっても三十はあるみたいです」


 イルナの疑問に、すかさずジェシカが答える。

 安全に宝箱が入手できるとあって、駆けだしの冒険者を中心に人気があるからな。それくらいの数がなければ、もっと図書館は人で溢れかえっているだろう。


 俺たちはその出題される部屋を一旦視界から外し、他の景色に目を向けてみる。


「遺跡の規模としては、かなり大きい方じゃないのか?」

「そうですねぇ……少なくとも、私がこれまで見てきた中ではトップクラスに大きな遺跡です」


 ジェシカがそう言うくらいだから、やっぱりかなり大きいのだろうな。 

 あとひとつ気になったのは……この入り組んだ造りだ。


「都市遺跡って話だったけど……本当にそうなのかな」

「どういうこと?」

 

 ミルフィがカクンと首を傾げる。


「ハッキリとしたことは分からないけど、都市ということは大人数がここで生活を営むことが想定されていたはずなんだ。それにしてはなんだか――」

「構造が不親切というわけですね」

「その通り」


 さすがにジェシカは読みが鋭い。


「なるほど! 確かに、ここで生活をしていこうと思ったらだいぶ不便ね」

「道が入り組んでいますから、迷っちゃいますよねぇ……」

「迷子多発」


 イルナにマシロにトーネも、この遺跡の違和感に気づいたようだ。

 ――そう。

 思えば、このダンジョンは最初から違和感だらけだった。

 そもそも、なぜダンジョンに図書館のような設備があったのだろうか。問題はそこからだ。


「この謎を解くのは……一筋縄じゃいきそうにないな」


 違和感しかないダンジョンの秘密……もう何から手をつけていいのか、分からなくなってくる。


「とりあえず、この辺りを調べてみましょうよ」


 イルナが俺たちを鼓舞するように言う。

 ……まあ、考えていても仕方がない。

 とにかく行動あるのみ。

 動いていたら、きっと何かヒントがあるはずだ。

 俺たちは手分けして辺りを調査してみることにした。



 ――一時間後。



「……何も見つからないな」

「やっぱり、あのクイズ部屋だけなのかしら」


 ……ミルフィの言う通りかもしれない。

 やはり、あの難しいクイズに全問正解しなければ答えにたどり着けないというのか。


 と、その時、


「お主ら、こんなところで何をしておる」


 白髪に白髭の老人が、俺たちに声をかけてきた。

 身なりからして冒険者のようだが……ちょっと違うみたいだ。


「あ、ああ……俺たちは冒険者なんです」

「それは見たら分かる。冒険者ならば、クイズのある部屋に入るはずじゃろう? それがどうしてまったく関係のないこんな場所に?」

「えぇっと……実は――」


 俺とミルフィは、ここに至るまでの経緯を簡単に説明する――と、


「……お主らの考え――決して的外れなどではない」

「「えっ!?」」


 老人は力強く言う。

 一体、この人は何者なんだ……?

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