第259話 違和感
大図書のダンジョンは、メンバーを入れ替えて再度挑戦することになった。
うちでもっとも知識のあるジェシカと、父親と一緒に世界中のダンジョンを旅してきたトーネ。このふたりに、戦闘要員として俺が同行する。他のメンバーは図書館の方で待機中だ。
この三人によるチームで新たに挑戦する――その結果は、
「全問正解!」
最初の部屋は呆気なく突破。
この辺は昨日と同じだ。
そして、これまた昨日と同じように部屋の奥の扉が開く。
「問題の難易度はどうでしたか? 昨日よりも簡単とか難しいとか」
「いや、それほど変化はないように思える」
「ということは……各部屋に応じて難易度は固定されていると見て間違いなさそうですね」
さすがはジェシカ。
冷静にこの状況を分析しているな。
「それじゃあ、次の部屋へ挑むとするか」
「ですね。正直、先ほどの問題はまだまだ生温いレベルでしたので、まだまだ先へ行けそうです」
「どんとこい」
なんと頼もしい言葉だろう。
今回は戦闘にまるで関係のないダンジョンだからな。
ふたりがまさにキーパーソンってわけだ。
扉を通ると、外に出た。
四方を壁に囲まれた狭苦しい通路で、次の部屋まで一本道となっている。
その道を三人で歩いていると、
「……あれ?」
俺はふと違和感を覚えた。
それが具体的にどのようなものなのか……口で説明することはできないけど、明らかに何かがおかしいと感じていた。
「もうすぐ次の部屋で――あれ? どうかしましたか、フォルトさん」
「お腹痛いの?」
俺が立ち尽くしていると、ジェシカとトーネが心配して声をかけてくれた。
「あぁ、いや……ちょっと変な感じがして」
「変な感じ……ですか?」
「どんな感じ?」
「それがその……よく分からないんだ」
俺がそう言うと、ふたりは顔を見合わせる。まあ、何を言っているか分からないだろうな。だって、説明している俺自身が何を言っているかサッパリ分からないんだから。
「すまない。忘れてくれ。感覚的な話だから、まったく関係ないかもしれないし」
「いいえ。おかげで気持ちが引き締まりました。フォルトさんのそういう感覚は信用できますしね」
「油断大敵」
結果として、何かが判明したってわけじゃないけど、気持ちを引き締めるという点では効果があったみたいだ。
「よし。この調子で次の問題も正解していこう」
「はい!」
「うん」
気合も入れ直し、俺たちは次の部屋へと通じる扉を開ける。
そこで待ち構えていたのは、
「来たか。楽しませてもらおう」
地を這うような低い声を発していたのは、甲冑を身にまとった男だった。
彼が次の出題者ってわけか。
「さあ、心して聞くがいい」
なんとも偉そうな口調で、甲冑の男は問題を口にする。
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