第256話 挑戦

 ダンジョンらしくないダンジョン――その名も大図書のダンジョン。

 謎多きそこへ挑むため、俺たちは奥へと進む。


 しばらく進んだ先で俺たちを待ち構えていたモノは――遺跡だった。


「な、何これ?」

「古代の都市遺跡みたいですねぇ……」


 イルナが驚き、マシロが冷静に状況を分析する。

 ……確かに、ここは遺跡で間違いなさそうだ。

 それも、家屋らしきものがあちらこちらに見られることから、マシロの見立て通り、都市遺跡だと思われる。多くの冒険者を部屋へ引きこもらせ、勉強に駆り立てている何かがここにあるというのか。


 不思議に思いつつ、さらに辺りを探索していると、ジェシカがある部屋を発見する。


「フォルトさん、ちょっとこれを見てください」

「うん? これは……古代文字?」


 解読はできないが、そこには明らかに文字のようなものが書かれている。

 それはある部屋へと通じるドアなのだが――


「入ってみるか」

「それがよさそうですね」


 他にこれといって新しい発見はない。となれば、ここが一体何なのか、それを調べる必要があるだろう。


 まず、俺とイルナとトーネの三人が先行して内部を調べることにした。


「突然モンスターが襲いかかってくるかもしれないから、気を引き締めていくぞ」

「抜かりはないわ」

「こっちもバッチリ」


 バリバリの格闘タイプであるふたりなら、仮に何かが襲いかかってきてもすぐにカウンターを叩き込めるだろう。反射神経もいいしな。


 とにかく、いかなる事態にも対応できるようゆっくりとドアを開けて中へと入る。

 と、その時、誰も触れていないドアが勢いよくバタンと閉じる。


「しまった!?」


 まさかこう来るとは。

 って、驚いていても仕方がない。 

 咄嗟に外へ出ようとドアへ手をかけた――が、



「ようこそいらっしゃいました~!」



 ドアを開けようとする俺たちの背後から、誰かの声がした。

 恐る恐る、三人そろって振り返ると――そこには一羽の鳥が羽ばたきながらこちらをジッと見つめている。


「おやおや、これは随分と若い挑戦者だねぇ」

「挑戦者……?」

 

 人間の言葉を平然と口にするその鳥は、俺たちを冒険者ではなく挑戦者だと言った。そこに違和感を覚えた俺だが、その鳥は大した説明もなく話をドンドン進めていく。


「この部屋に入れるのは一度に三人までなんだ。それ以上は誰も入れないようになっているんだよ」

「さ、三人まで?」


 なるほど。

 それで俺たち三人がここへ残されたのか。

 あの鳥の様子だと……質問したらいろいろ返事をしてくれそうだな。


「さっき、俺たちを挑戦者と言ったが、何に挑戦させるつもりだ?」

「う~ん? それも知らずに乗り込んできたのかい? 冒険者としては随分と詰めが甘いんだねぇ。ダンジョンの情報はきちんと仕入れておかないと大変な目に遭うよ?」

「ご忠告どうも?」


 まるでこちらを挑発するような物言い……俺やトーネは特に気にはしてないが、イルナはもう爆発寸前だった。

 まいったなぁ……冒険者としてのスキルや知識はうちのパーティーでも随一だが、煽り耐性は間違いなく最下位なんだよ、イルナって。ある意味、もっとも相性が悪い相手と当たっちゃったな。


「で? 挑戦するの?」

「仮に、しないと答えたら?」

「ここから出られないよ」

「なっ!?」


 それってつまり……挑戦するしか選択肢がないってわけか。


「……分かった。受けて立つ」

「そうこなくっちゃ! じゃあ――第一問!」

「えっ?」


 だ、第一問?

 それってどういう――こちらが疑問を口にするより先に、どこからともなくドラムロールが流れてくる。

 そして、


「ディオックの森に生息するミルルダの雄が繁殖期にする特徴的な行動とは何?」

「……は?」


 な、なんだ、これ?

 これが挑戦ってヤツなのか?

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