第250話 目指す場所
次の目的地を大図書のダンジョンに定めた俺たちは、最寄りの町であるブルトブを目指して移動を開始した。
「シェンディル王国……いろんなことがあったな」
初めて俺を
俺たちは馬車に乗り込み、ブルトブの町へ向けてのどかな道を進んでいく。
「ここら辺は何もないわねぇ」
「地図によると、かなり広大な草原みたいよ」
イルナとミルフィが景色を眺めながら言う。
確かに、大都市のガーネス・シティ周辺は規模の大きな町が多かった。そこからだんだん離れているということも関係しているのかな。
「でも、こんなにのどかだと眠くなっちゃいますよねぇ」
「同意」
一方、マシロとトーネは互いに肩を寄せ合ってうとうとしている。その横ではジェシカが難しい顔をしながら本を読んでいた。
「何を読んでるんだ、ジェシカ」
「ああ、いえ、大図書のダンジョンに関する情報をおさらいしておこうかと」
「へぇ~、それでどうだった?」
「知れば知るほど興味の湧いてくるダンジョンですね」
ジェシカのテンションはめちゃくちゃ上がっていた。何気なく行きたいと言ったダンジョンだが、思いのほか心に刺さったようだ。
かく言う俺も、ちょっと楽しみにしている。
これまで、砂のダンジョンとか塔のダンジョンとか廃棄のダンジョンとか、とにかく名前から物騒なイメージがついていた。しかし、大図書のダンジョンというのは名前からして殺伐とした空気が一切感じられない。
額面通りに受け取るなら、モンスターとは無縁の平和で穏やかなダンジョンなのだろう。……果たしてそれをダンジョンと呼んでいいのかは疑問だが。
「でもさぁ、図書ってことは本がたくさんあるわけでしょ? それってダンジョンって呼べるのかしら」
俺とまったく同じ疑問を抱いていたミルフィがジェシカへと問う。
だが、むしろジェシカは「待っていました!」と言わんばかりに生き生きと答えた。
「そこなんですよ! 確かに、書物に記された大図書のダンジョンに関する情報はとてもダンジョンのものとは思えないんです! 町で話題のスポット紹介みたいな空気なんですよ! でも! でもですよ! ここには他のダンジョンと同様に宝箱がドロップするんです! しかも、そこら中に!」
「そこら中に宝箱?」
なんだかよく分からないな。
ただ、これまでのダンジョンとは明らかに異質であるということは理解できた。
「今までの常識が一気に覆りそうなダンジョンだな……」
恐らく、世界中にあるダンジョンの中には、この大図書のダンジョンと同じように他とはまるで状況が異なる場所がいくつかあるのだろう。霧の旅団が調査している大迷宮のダンジョンだって、そのうちのひとつだ。
こうしたダンジョンに挑戦していくことで、俺たちの冒険者としてのレベルも上がっていく。
いつか、リカルドさんたちのお手伝いができるくらいまで、レベルを上げたいものだ。
「あっ! 見て! 町が見えるわ!」
そうこうしているうちに、イルナが目的地であるブルトブの町を発見。
今日はもう遅いので宿屋で一泊し、明日から情報収集を開始するとしよう。
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