第249話 未知なるダンジョン

 シェンディル王国の国王陛下から直々に王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーにならないかと打診されたが、俺はそれを断ってみんなと一緒に旅をする道を選んだ。


 同じ打診を受けて断るヤツは、ほとんど――いや、世界中にいる解錠士アンロッカーの中で俺だけかもしれない。


 ただ、俺にとっては安定して高額な報酬が受け取れ、かつ地位も名誉もついてくる王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーより、気ままに世界中のダンジョンを見て回っている方が楽しかった。ただそれだけの理由だ。



 翌日。

 俺たちは宿屋に併設する食堂で朝食を済ませると、そのまま次の目的地について話し合う。

 昨日は途中から王宮解錠士ロイヤル・アンロッカー絡みの話題ばかりになってしまったからな。コーヒーでも飲みながらゆっくり次の目的地を決めて、それから旅立つことにしよう。


 その際、周辺の地図を見ていてあることに気がつく。


「聖都まであと半分を切ったのか……」


 この世界でもっとも偉大な解錠士アンロッカーとしてバッシュさんやマルクスさんが尊敬するという聖女ルナリア様――俺は彼女に会うため、ガーネス・シティでの一件が解決した後、聖都を目指しつつ、道中にあるダンジョンを攻略していった。


 その目的地である聖都が、そろそろ視界に入ってくる距離にまで来ていた。


「どうする? 一気に聖都まで行っちゃう?」


 イルナの言葉に対し、俺は首を横へ振る。


「まだまだ鍛えていきたいし、近づいたとはいえ距離自体はまだあるからな。焦る旅というわけでもないんだ。まずはダンジョン攻略を優先させよう」

「そういうと思ったわ!」


 どこか嬉しそうなイルナ。

 ――イルナだけじゃない。

 俺が王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーの話を断った時から、みんな妙に上機嫌となっている。相談もせずにその場の勢いで断ってしまったが、あの判断は彼女たちにとってもいい結果となったようだ。


 で、次の目的地だが、ここで声をあげたのはジェシカだった。


「このダンジョンなんてどうでしょうか? ちょっと興味がある名前だったので」


 そう語ったジェシカの指さす先にあったダンジョンは――


「大図書のダンジョン? ……どういうダンジョンなんだ?」


 なるほど。

 確かにこれは興味深い。

 一体、何を持って大図書というのか……地図に書かれている情報だけでは何ひとつ判断できない。


「大図書って……本がたくさんあるってこと?」

「どうなんでしょうか……」

「想像できない」


 ミルフィ、マシロ、トーネの三人も強い関心を持ったようだ。


「どうですか、フォルトさん」

「うん。いいんじゃないか。俺もそこがどんなダンジョンなのか気になるし」


 今回はお宝探しというより、このダンジョンの正体を知りたいって気持ちが強い。


 これまで挑んできたダンジョンは、名前だけで大体どのような場所か想像できたけど、大図書のダンジョンは本当にまったく読めない。


 どんなモンスターが出て、どんな宝箱がドロップするのか。

 楽しみにさせてもらおう。

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