第251話 解錠士《アンロッカー》として
謎多き大図書のダンジョンへ挑むため、俺たちは最寄りの町であるブルトブの町へと到着した。
馬車を預けてから、町へ一歩踏み込むとこれまで訪れた町とは決定的な違いがあることに気づく。
それは――港町であるという点。
俺たちの進んできた方向からはまったく見えなかったのだが、この町のすぐ近くに海があったのだ。
さまざまな大陸からやってきた船が何隻も停泊しており、この地で新しく商売を始めたり、或いはここでしか手に入らないアイテムを自国へ持って帰るなど、さまざまな目的で人が訪れる。
俺たちはダンジョンにある宝箱からドロップするアイテムだけで生活をしているが、他の大陸ではまったく異なった生活や文化があるらしいから、この地に興味を持ってやってくる人がいるというのも理解できる。
「別大陸かぁ……行ってみたい気持ちもあるわね」
「かなり遠くの大陸になりますが、解錠レベルの存在していないダンジョンもあるそうですよ」
「それなら
自虐気味に言うと、イルナが真っ先に反応する。
「でもまあ、そうは言うけど、遠くの大陸って言ったってそんな簡単に行ける距離じゃないから……この辺りに住んでいる人たちにとって、やっぱりフォルトみたいな
「イルナ……」
照れ隠しなのか、すぐにそっぽを向いてしまったイルナ。
しかし、その言葉は俺の心に染み渡ったよ。
その後、他のみんなからさっきの発言を茶化され、真っ赤になりながら必死の抵抗を見せているイルナ――その様子を眺めながら、夜を過ごす宿屋に目星をつけて入る。
賑やかな港町ということもあって、宿屋の数はたくさんある。
寝る場所に困らないというのは大きな利点だな。
で、その宿屋というのも異国情緒あふれる雰囲気が漂うところだった。
「なんだか、店内の造りがこれまでの宿屋と違うわね」
「実に興味深いですよ」
店内を見て回るミルフィとジェシカは、早速店内の一風変わった空気に関心を抱き、いろいろと見て回っている。
その間に、俺とイルナとマシロ、それにトーネの四人で受付を済ませ、部屋の鍵をもらった。今回は部屋の数も多く、リーズナブルなお値段だったということでそれぞれ個室で泊まることとした。
というわけで、部屋も確保できたことだし、次にやることは――
「さて、それじゃあ食事にしましょうか」
……イルナに先を越されてしまったか。
とりあえず、今日のところは宿屋に併設されている食堂でもいいかなと思い、そちらへと移動。各々が食べたいものを注文して待っていると、そこへ見るからに冒険者という屈強な男たちが数人やってきた。
「やれやれ……今日はまいったな」
「まったくだぜ」
「骨折り損のくたびれ儲けとは、まさにこのことだな」
男たちは席に着き、人数分の酒を注文すると愚痴を言い始めた。
恐らく、この近くにある大図書のダンジョンに挑んだものの、あまりいい結果を得られなかったのだろう。
「あんなのは想定外だぜ」
「あぁ……しかし、あれを攻略しなければあのダンジョンの最奥地までたどり着けないのは事実」
「なんとかして攻略しないとな」
どうやら、かなり苦戦する難所があるらしい。
大図書のダンジョン……これは、事前に抱いていたイメージよりもずっと難しいダンジョンなのかもしれないな。
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