第212話 一転

 マシロを救うため、俺たちはメタル系モンスターを狩ることとなった。

 最初こそ、そのスピードと耐久性から苦戦を強いられたが、チームワークを生かしてなんとかメタル系モンスターたちを狩ることに成功する。


「この調子で次々と狩っていこう! そうすれば、必ずお目当てのアイテムに行き着くはずだ!」

「「「「おぉ!」」」」


 一気にモチベーションの上がった俺たちは、その勢いのままメタル系モンスターの討伐に乗りだした――が、ここで新たな問題が発覚する。


「くっ……これも違う」


 それは、宝箱からドロップするアイテムだ。

 俺たちが捜しているのは虹の首飾り。

 レア度は三種の神器などに比べたらだいぶ下がるが、それでもなかなか出てこない。

 メタル系モンスターを討伐して得られる報酬は、自然と解錠レベルの高い宝箱――つまり、レアアイテムが確定なのだが、狙ったものをゲットするのは困難であった。

 それに、倒せるようになったからと言って、モンスターの出現率が上がったわけではない。一匹見つけるのに、時には一時間以上かかることもあった。


「くそっ!」


 刻一刻と、タイムリミットが迫る。

 だが、焦ったところでどうしようもなかった。


 俺たちは見つけたメタル系モンスターを片っ端から狩っていく。

 ――が、やがてそれにも限界が訪れた。


「うっ!?」


 まず、イルナの体に異変が起きた。

 続いて、同じくトドメ役を務めていたトーネも、疲労から目眩を起こしてダウンしてしまう。


「イルナ! トーネ!」

「大丈夫ですか!?」

「今回復してあげる!」


 俺とジェシカとミルフィはふたりへと駆け寄る。

 ミルフィが得意の回復魔法でふたりを介抱するが、それでもまだ疲れが残っているように見えた。肉体的な疲労だけでなく、見つからないという精神的な圧迫が、ふたりを苦しめている。


 だが、それは何もふたりに限ったことではない。

 俺たちも歯がゆい思いをしていた。

 結局、少し休むことにしようとみんなに提案し、仮眠をとることにしたのだった。



 体力の回復に努めるため、仮眠をしようとした俺は静かに目を閉じる――と、しばらくして、誰かに呼ばれる声がした。


〈久しぶりですね〉

「!?」


 それは、俺の持つ女神の鍵の声。

 ということは……これは夢の中か。

 以前、砂漠のダンジョンや塔のダンジョンでも夢の中に現れ、俺にヒントをくれた――もしかして、今回もそうなのか?

 俺は藁にも縋る思いで声を出す。

 

「教えてくれ! どうやったら、虹の首飾りが手に入るんだ!」

〈相当追い込まれているようですね〉


 少し困惑しているようにも聞こえる女神の鍵の声。

 どこか、ためらいさえ感じる様子だったが、


「もうひとつの力を解放しましょう」


 女神の鍵は、自身に隠されていた新たな力を俺に与えてくれた。

 

「い、一体……これは……」

〈あとは使ってみれば分かりますよ〉


 それだけ告げると、女神の鍵の声はその気配をなくす。

 同時に、俺は夢から目覚めた。

 

「残りはあと三時間……やるしかない」


 新たに授けられた女神の鍵の力。

 それを実践するため、俺はみんなを起こして最後の勝負に出る。

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