第211話 メタル対策

 マシロを救うアイテム・虹の首飾り。

 それがドロップする確率の高い鋼のダンジョンへ向かった俺たちは、ダンジョンのトラップも見抜いてようやくメタル系モンスターと遭遇する。


 だが、その逃げ足の速さから、戦闘にすら発展しないまま逃してしまう。


「くそっ……思っていた以上に手強いぞ……」


 逃げ足が速いだけでなく、耐久力も高い。

 おまけに、ドロップした宝箱からお目当てのアイテムが出るとも限らない。

 状況は限りなく最悪。


 だけど、あきらめるわけにいかない。



 ――あれから数時間。

 粘って粘って、なんとか五体のメタル系モンスターと遭遇することに成功するが、ここでも戦う前に逃げられてしまった。


「もう! これじゃあいつまで経っても宝箱をゲットできないわよ!」


 何もできない悔しさを爆発させるイルナ。

 他のメンバーも口には出さないが、苛立ちがあるようだ。


「少し……休憩しよう」


 肉体的にも精神的にも疲労がたまっていた。

 態勢を立て直すという意味でも、少し時間を置こう。

「で、でも!」


 イルナは反対のようだが……さすがに今の状態を続けても事態が好転しないと思ったようで、作戦を立てるという名目で少し休むことに。


「あいつらのスピード……なんとかできないかしら」

「それについてなんだけど、連携して敵を追い込むってどう?」


 ミルフィからの提案に、俺たち四人はすぐ反応を示す。


「追い込むって……」

「誘導ってことよね?」

「そうそう!」


 どうやらイルナは理解できたらしい。

 つまり、今いる五人のメンバーのうち、ふたりがまず攻撃を仕掛ける。そして、残った三人がモンスターの進路を防ぐように立ちはだかり、打ち倒す。シンプルだが、これがベストな戦い方か。


 最初に仕掛けるふたりには、ジェシカとミルフィに任せて、高火力の俺とイルナとトーネの三人で一気に仕留める。


 段取りを決め、軽く食事をしてから再度メタル系モンスター討伐に乗りだした。

 歩きだして三十分後。

 

「いた」


 トーネが静かにメタル系モンスターの存在を俺たちに知らせる。最初に遭遇した、メタルマッスルスライムだ。

 すぐにジェシカとミルフィのふたりが攻撃を仕掛けるが、今回もやはり逃げだそうと走りだした。


 ――しかし、その逃走ルートを予測していた俺たち三人が一斉に飛びかかる。


「もう逃がさないわよ!」

「倒す」


 まずはイルナとトーネの打撃系コンビが強烈なキックとパンチをお見舞い。これで大きくふらつき、逃げる足を失ったメタルマッスルスライムへ、俺がトドメの一撃を龍声剣から放つ。


「これでどうだ!」


 魔力によって生まれた炎を浴びて火だるまとなるメタルマッスルスライム。

 これだけ畳みかけられて倒せなかったら、また作戦を仕切り直さなければならないのだが――その心配は杞憂に終わる。


 ポン。


 そんな音を立てながら、メタルマッスルスライムは宝箱へと姿を変えた。

 そう。

 ついにメタル系モンスターを倒すことができたのだ。


「「「「「やった!」」」」」


 思わず五人の声が揃う。

 ようやく見出した光明……さあ、ここから狩って狩って狩りまくるぞ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る