第200話 策略

 ガーネスの持つ命の宝玉というレアアイテムの効果により、突如動き出した甲冑。

 しかもそれらは名だたる職人たちが手掛けたとされるお宝級の逸品ばかり。

 あらゆる性能が段違いだ。

 

 それだけではない。


 甲冑たちだけではなく、ガーネス自身も近くにあった巨大な斧を手にする。


「あの斧は……」


 カタログで見た記憶がある。

 


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アイテム名 【灼熱の聖斧】

希少度   【★★★★★★★☆☆☆】

解錠レベル 【643】

平均相場価格【測定不能】

詳細    【炎の精霊たちによって作られたとされる斧。炎魔法を自在に操れる】


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 レア度自体は命の宝玉に比べて低いものの、使い勝手のいい武器だ。

 甲冑たちに戦わせ、自分は安全圏から俺たちを攻撃するってわけか……ずる賢い手を使う!

 

「さあ、お手並み拝見といこうか」


 歪んだ笑み浮かべて、ガーネスは戦闘開始の合図と言わんばかりに指をパチンと鳴らした。それと同時に、甲冑たちが一斉に俺たちへと向かってくる。


 剣、槍、斧、弓――それぞれ違った武器を装備した甲冑の数は少なく見積もっても五十はある。


 数の差ではこちらが圧倒的に不利。

 けど、そんな状況はこれまで何度も打ち破ってきた。


「蹴散らして差し上げますわ!」

「ここは私に任せてください!」


 まず動いたのはウィローズとマシロだった。

 ウィローズは鞭を激しく振り回し、迫り来る甲冑たちを吹き飛ばす。マシロは得意の歌唱魔法によって生まれた衝撃波で同じく接近してくる甲冑たちを蹴散らした。


 神蛇の鞭と歌唱魔法。

 広範囲をカバーできる両者の攻撃。


 だが、それだけではカバーしきれず、隙間を縫うようにして他の甲冑たちがこちらへ近づいてくる――とはいえ、最初に比べたらだいぶ数は絞られた。こうなれば、あとはイルナ、トーネの接近戦を得意とするふたりの出番。


「はあっ!」

「やあっ!」


 高い戦闘力を持つふたりならば、よほどの相手でなければ格闘戦で負けることはない。さすがに今回は苦戦を強いられるかと心配したが、どうやら杞憂だったようだ。


「温いわね」

「この程度なら楽勝」


 あっという間に甲冑たちを倒したイルナとトーネ。

 攻撃魔法を覚えたばかりのミルフィと攻撃アイテムを駆使して戦うジェシカもそれぞれの持ち味を十分に発揮して活躍している。


 数で押せると思っていたガーネスにとって、これは誤算だったろう――そう思っていたのだが、


「ふはははは!」


 突如、ガーネスの高笑いが響き渡る。

 情勢はどう見たって不利なのに……何がそこまでおかしいんだ?


「あっ!」


 ガーネスの不気味な笑みに気を取られていると、イルナが驚きの声をあげる。それに反応して視線を戻すと、俺も思わず「あっ!」と声をあげた。

 先ほど吹き飛ばした甲冑たちは、まるで何事もなかったかのように起き上がり、再びこちらへと迫ってくる。人間とは違い、甲冑であるヤツらはどれだけダメージを与えようとも無駄なのだ。

 

 つまり――ヤツらを操っている張本人のドン・ガーネスを倒さない限り、あの甲冑を止める術はない。


 優勢だと思われた事態は、一転して危ういものへと変わっていた。

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