第199話 秘策
俺たちがたどり着いたのはドン・ガーネスの宝物庫。
古今東西、あらゆるお宝が眠るその場所が、俺たちとガーネスの最後の戦いの場となった。
とはいえ、すでにガーネス軍は壊滅寸前。
切り札のゴーレムたちも撃破され、残すはいよいよボスのみといった情勢であった。
「くくく……」
だが、ガーネスに焦りの色は見られない。
「ちょっと! 薄気味悪い笑みを浮かべてないでさっさと降参しなさい!」
「そうですわ! これ以上の抵抗は無駄ですわよ!」
イルナとウィローズの強気コンビが、ガーネスへそう告げる――それでも、一切顔色を変えなかった。
何があるんだ、とガーネスの狙いを慎重に読み解こうとしていた時、イルナとウィローズの近くにあった《何か》が動きだす。それがなんなのか確認する前に、「ヤバい」と感じた俺はふたりに向かって「危ない」と叫んでいた。
「「っ!?」」
俺の叫び声を耳にしたふたりは気配に気づき、まったく同じタイミングでその場から飛び退いた。
直後、「ガン!」という金属を叩きつけたような音が鳴り響いた。
「! あ、あれは!」
信じられない光景を目の当たりにしたミルフィが驚きの声をあげる。
ジェシカにマシロにトーネ、さらには使い魔のテリーでさえ、あまりの事態にその場から動くことができなかった。
ふたりを襲ったのは――甲冑だった。
「こいつ!」
イルナは装備した聖女の拳で甲冑の頭部を殴る。
すると、驚いたことに頭部は簡単に外れ、音を立てながら床を転がっていく――なんと、甲冑の中に人はおらず、ひとりでに動いていたのだ。
「ど、どうなっているのよ!?」
「もしかして……魔法の類か?」
魔法に詳しいミルフィへ目配せをするも、首を横に振って否定する。
「甲冑に魔法文字を書いて、自律的な活動を可能にする実験をしていた国があるっていう書物は見たことあるけど……あれはもう百年くらい前の話だし、完成したのは試験体として生みだされた一体だけだったはず。その一体も、国が戦争に敗れて消滅したと同時に行方知れずになったと聞いたわ」
「じゃ、じゃあ、あの動く甲冑の正体は……」
敵の正体が分からず、俺たちは困惑していた――が、この状況でも冷静さを失わない者がいた。
「あれは恐らく……アイテムの効果です! 命を持たない物へ命を吹き込み、自らの配下とするレアアイテムがあると聞いたことがあります!」
「アイテムだって?」
そういえば、と以前カタログでその手のアイテムがあったことを思い出す。
確か――
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アイテム名 【命の宝玉】
希少度 【★★★★★★★★★☆】
解錠レベル 【834】
平均相場価格【測定不能】
詳細 【宝玉に魔力を注ぎ、それを浴びせることで物に命を吹き込む】
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「……命の宝玉か!」
よく見ると、ガーネスの服の胸元には、怪しい赤色を放つ宝石のようなものがつけられている。あれで甲冑に命を与え、操っていたのだ。
「うまくかわしたな。――だが、次はそううまくいくかな?」
余裕たっぷりのガーネス。
その態度を見て、俺はハッと気づく。
この宝物庫には……レア度の高いお宝級の甲冑があちこちに存在していることを。
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