第189話 聖騎士団

 久しぶりに霧の旅団と合流した俺たちは、カタルスキーさんたちとの合流地点に向けて進んでいた。

 その場所とは――俺たちの標的ことドン・ガーネスが潜んでいるとされるその名もガーネス・シティ。


 もちろん、最初からガーネス・シティへ乗り込むつもりはない。

 ガーネス・シティから少し離れた位置にある中継都市ボーデンに集まる予定となっている。


 大迷宮のダンジョンから旅立ってからしばらく経ち――いくつもの町を通過して目的地へとたどり着いた。

 中継都市ボーデン。

 そこは大国同士を結ぶ重要な商業拠点であった。

 ――しかし、それは昔のこと。

 今は町にある多くの店が閉じており、かろうじて開いている店も閑古鳥が鳴いている状態。


 理由は簡単。

 ドン・ガーネスがすぐ近くにいるからだ。

 以前はこの町の近くにあるダンジョンを求め、多くの冒険者たちで賑わっていたらしいのだが……今はその面影すらないな。


「あっ! フォルト!」

「こっちですよ~」

「待ってた」


 そう声をかけてきたのは久しぶりの再会となるミルフィ、マシロ、トーネの三人であった。

 その背後には、


「やあ、遅かったじゃないか」


 冒険者パーティー・月影のリーダーであるグレイスさんが立っていた。

 さらに、王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーのバッシュさんにウィローズも合流済みであった。


「うおっ……」


 そこで、俺は気づいた。

 俺たちが入ってきた町の入り口付近には人がほとんどいなかったが、少し中までは入ると大勢の冒険者たちで賑わっていた。

まあ、町の入り口付近でたくさんの人が集まっていたら、ドン・ガーネスに気づかれる可能性もあるが――さすがに、すっかり人のいなくなったこの町をあの男が見張っているはずもないか。


 夜明けにはカタルスキーさんを筆頭に、それぞれの冒険者パーティーが四方に分かれてドン・ガーネスの待つガーネス・シティを取り囲む。

 この作戦を成功させるキーポイントは……聖都市から来たという新戦力であった。

 その新戦力――彼らは一目で分かった。


「ほう……あれが噂の聖女直属の聖騎士団か」


 頷きながら語るリカルドさんの視線の先には、揃いの武器や防具を身に着けた騎士たちの姿があった。


 カタルスキーさんが呼び寄せたという、聖女ルナリア様に仕える騎士たち。

 みんな精悍な顔立ちで、しっかりと統率が取れているように見える。

 中でも目を引くのが、一番豪華な装飾の施された鎧を身にまとう中年の男性――恐らく彼がリーダーなのだろう。


 その男性は俺たちの視線に気がつくと、こちらへと歩み寄る。


「あなたが噂に名高い霧の旅団のリーダーですね?」

「ああ。リカルドだ」

「私は聖騎士団の団長を務めます、フォーバートです」


 せ、聖騎士団の団長!?

 まさかいきなりトップが乗り込んできたのか。


 ただ、それだけ聖女様も打倒ドン・ガーネスに本気ってことなんだよな。

 それに、聖騎士団長が参戦すると分かり、周りの冒険者たちも一層気合が入った。


 いよいよ……明日、決戦の火ぶたが切って落とされる。

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