第185話 作戦会議という名の宴会

【お知らせ】


第6回カクヨムコン特別賞&ComicWalker漫画賞受賞

「絶対無敵の解錠士」


《レーベル》スニーカー文庫

《イラスト》UGUME先生

《発売日》10月29日(金)


 書籍版でしか読めないオリジナルエピソードもあります!


 現在予約受付中!

 よろしくお願いいたします。


…………………………………………………………………………………………………




 カタルスキーさんに会うため、俺たちはハーシェ村の宿屋へと足を運ぶ。

 そして、宿屋の前まで来ると、


「な、なんだか賑やかですね……」


 表情を引きつらせながら言うジェシカ。

 にぎやか――を通り越してもう騒音レベルだ。 

 相当盛り上がっているみたいだな。


「よし……いくぞ」


 覚悟を決めて、俺たちはその喧噪の中へ飛び込んでいった。

 すると、まず俺たちを襲ったのは大音量の笑い声だった。


「はっはっはっ! 今夜は実に気分がいい!」


 その中心にいた人物。

 短い青髪の中年男性が――


「カタルスキーさん!」


 俺が声をかけるよりも先に、リンが駆け寄った。


「む? リン? なぜここにいる?」


 距離的にも、この場にいるはずがないリンの登場に、カタルスキーさんは驚きを隠せない様子だった。

――ただ、俺たちにとっても驚くべき人物がその場にいた。


「えっ!? マルクスさん!?」

「おや、フォルトくんたちまでいるのか?」


 なぜか、廃棄のダンジョンにいるはずのマルクスさんが宿屋の食堂でカタルスキーさんたちと大盛り上がりしていた。


「どうしてここにいるんだい?」

「いや、それはまあ、いろいろあって――っていうか、マルクスさんの方こそ、なぜこの宿屋に?」

「カタルスキーに呼びだされてねぇ。……なんでも、ドン・ガーネスと決着をつけたいから、戦力を集めているらしいじゃないか」

「え、えぇ……」

「そのことについて話し合っていたんだよ」


 そ、そうなのか……?

 なんだか普通に酒盛りをしていたようにしか見えなかったけど。


「僕としても、ドン・ガーネスのやり方について、前々から腹に据えるものがあったからねぇ。カタルスキーがこれを機会に、攻勢を仕掛けようっていうなら……是非とも乗りたいと思ったのさ」


 静かな怒りを燃やすマルクスさん。

 俺たちが廃棄のダンジョンを訪れた時にも、解錠依頼の報酬で法外な値段を吹っ掛ける悪徳な解錠士アンロッカーの存在を嫌っているような発言があったし。


「すでに聖都市へ連絡を回し、ルナリア様から兵を送ってもらうよう打診を送っている」

「!? ルナリア様にですか!?」


 これは本格的――というか、マジだ。

 いや、カタルスキーさんやマルクスさんが絡んでいる時点で本気度はうかがえるが……ここまでの大戦力になるとは。

 ……いや、待てよ。

 まだ戦力はある。


「……マルクスさん」

「なんだい?」

「バッシュさんには使いを?」

「送りたかったのだが、人手不足でねぇ」

「なら、俺たちが行ってきますよ。――こいつの力で」

「! 竜の瞳か」


 マルクスさんは竜の瞳の効果を知っている。

 この力があれば、一瞬にしてバッシュさんの屋敷へと飛べる。

 それに……もしかしたら、あそこにはさらに強力な助っ人となり得る王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーがいる。

 彼女たちの力も借りられたら、向かうところ敵なしだ。


「ほぉ……君がマルクスの言っていた解錠士アンロッカーか」


 その時、カタルスキーさんの視線がこちらへと向けられた。


「霧の旅団に活きのいい若いのが入ったと噂で耳にしていたが……まさかリンと同じくらいの年の少年とは思わなかったな」

「頼りになりませんか?」

「逆だよ。霧の旅団のリーダーであるリカルドは優れた男だ。そいつが見込んだ少年となれば……十分頼りになる」

「! あ、ありがとうございます!」

「うむ。頼んだぞ、少年」

「はい!」


 こうして、俺たちはバッシュさんに会うため、翌朝にバッシュさんの屋敷を訪れることになったのであった。

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