第183話 ドン・ガーネス
ひょんなことから、Sランクパーティーのリーダーを務めるカタルスキーさんの救出を依頼された俺たち。
しかし、カタルスキーさんが殴り込んでいったっていうのがあのドン・ガーネスのところ……さすがに俺の意思だけで即答はできない。
と、思っていたのだが、
「ためらう必要なんてないわよ」
イルナが真っ先に声をあげた。
「そいつがいる限り、マシロも心から安心できるわけじゃないし」
「それに、フォルトだって本当はカタルスキーさんのことが心配なんじゃない?」
「イルナ……ミルフィ……」
どうやら、見透かされていたらしい。
「まあ、ドン・ガーネスのところへ向かったといっても、まだ直接会ったわけではないみたいですし、カタルスキーさんが乗り込む前に接触すれば問題ないのでは?」
「そ、そうですよ!」
「止めるべき」
「た、確かに」
ジェシカ、マシロ、トーネの三人の話を聞き、俺は改めてリンへ尋ねた。
「カタルスキーさんが殴り込みに行ったのはいつだ?」
「き、昨日なの」
そ、そんな最近の話だったのか。
「私はなんとかカタルスキーさんの力になりたくて……ドン・ガーネスに対して反抗しているという有力な
「えっ?」
そのふたり……思いっきり知人だ。
「もともとこのダンジョンで探索をしている途中にそのバルテルという男に会って、飛びだしていったから――」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
俺はリンへさっき出てきたふたりの
「ま、まさか……」
最初は驚いた様子であったが、すぐに状況を正確に把握すると涙を浮かべながら訴えてくる。
「そのふたりにコンタクトは取れないの?」
「……方法はある」
そう言って、俺はあるアイテムを取りだす。
そのアイテムとは――
「あっ! 竜の瞳ね!」
ミルフィの言葉通り。
登録しておいた場所へ移動できる竜の瞳の力があれば、バッシュさんの屋敷とマルクスさんのいた廃棄のダンジョンへ一瞬にして移動することができる。
「そ、そんな凄いアイテムが……」
「カタルスキーさんほどの大物冒険者が動きだすとなったら、きっとバッシュさんやマルクスさんも反応するはずだ」
「そうね。それを聞いて、あのふたりが協力をしてくれるなら、とても心強い存在になるわ」
人々を苦しめる悪徳な
今回、有力な冒険者であるカタルスキーさんがドン・ガーネスとの敵対を表明しているというなら、俺たちと協力関係を結べるはず。リンの口ぶりからして、恐らくカタルスキーさん自身もバッシュさんやマルクスさんの存在は知っているようだし、交渉してみる価値はある。
「とりあえず、今はカタルスキーさんを止めよう。どこへ行ったのか、その目的地は分かるか?」
「カタルスキーさんは――ヤツの居城とも言われるガーネス・シティという町へ向かったわ」
「ガーネス・シティ……」
そのまんまのネーミングだな。
ともかく、まずはカタルスキーさんと合流をしなければ。
それから話し合って――ドン・ガーネスへの対抗策を考えよう。
なんだか、大仕事になりそうな予感だ。
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