第164話 マシロの決意

【お知らせ】


第6回カクヨムコン特別賞&ComicWalker漫画賞受賞

「絶対無敵の解錠士」


《レーベル》スニーカー文庫

《イラスト》UGUME先生

《発売日》11月


 書籍版でしか読めないオリジナルエピソードもあります!


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 よろしくお願いいたします。


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 ギルドに現れた謎の男。

 中性的な顔立ちとは裏腹に、かなり荒っぽい性格らしく、おまけにあのドン・ガーネスと関係がある人物らしい。


 それについては宿屋に戻り、別行動を取っていたグループと合流してから、マシロが教えてくれた。


「彼の名はバルテル……ドン・ガーネスが信頼を置く冒険者のひとりです」


 やはり、マシロが震えていたのは、あの屈強な大男が原因ではなく、そいつを一瞬にして蹴散らした若い男の方にあったか。


「そのバルテルって、どんなヤツなんだ?」

「まあ、あの時の言動で大体察しはつくけどね……」


 俺とイルナはあの現場を目撃しているので、確かに大体予想はつく。しかし、ミルフィたちは見ていないし、もしかしたらまだ隠された情報があるのかもしれない。


「彼はフリーの冒険者です」

「フリーって……パーティーには所属していないのか」

「はい。ひとりで行動していると、そう言っていました」


 今どきいるんだな、そんな冒険者。

 ダンジョン探索の成功率のアップや効率化を図るため、パーティーを組むのが当たり前となっている。しかし、中にはそのバルテルってヤツみたいに、単独で行動をする者もいる。

 ただ、その場合は大物狙いというより、簡単なクエストを消化してその日の生活費を稼ぐのが一般的だ。

 彼らは以前所属していたパーティーから戦力外を言い渡されたり、そもそも人付き合いが極端に苦手だったりと、さまざまな理由でソロ活動をしているが……その大半に共通しているのは、「いずれはパーティーを組んでダンジョンに潜りたい」という野望だ。


 だが、話を聞く限り、バルテルは望んで単独行動をしているように思えた。

 実力は申し分ないから、人間関係の構築が増えてなのか?

 しかし、あのドン・ガーネスに気に入られているくらいだから、一概にそうとも言い切れないな。


「そのバルテルってヤツ……風のダンジョンへ潜るのかしら。もしそうだとしたら、ちょっと考えないといけないわね」


 イルナの指摘はもっともだった。

 もし、バルテルがドン・ガーネスにマシロの居場所を報告したら――と、ここでマシロが口を開く。


「私なら大丈夫ですよ」

「マシロ……?」

「もし、ドン・ガーネスが私を連れ戻しに来たら……その時は全力の歌唱魔法で吹っ飛ばします」


 笑顔でそう言ってのけるマシロ。

 なんか……この前のダンジョンから、心身ともに強くなった気がする。


「みなさんを守れるくらい強くなりますよ!」

「とうとうマシロに守ってもらえる日が来るなんて……」

「感慨深いですねぇ……」


 ミルフィとジェシカは孫を見守るおばあちゃんみたいなことを言いだした。

 まあ、でも、あのマシロがここまで強くなったのは喜ばしいことだ。

それに――


「俺たちだって、全力でマシロを守るぞ」

「そうよ。誰にもマシロを渡したりはしないんだから!」

「私も守る」

「みなさん……」


 俺に続き、イルナとトーネも声高らかにそう宣言する。もちろん、ミルフィとマシロも同じ考えだ。


 こうして、仲間との絆を確かめ合ったところで本日は解散。

 それぞれの部屋へと戻り、予定通り行われることとなった風のダンジョン探索に向けてゆっくりと体を休めることに。


 それにしても……だんだんとドン・ガーネス一派に近づいている気がするな。

 そのうち、顔を合わせることもあるかもしれない。


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