第163話 謎の男
【お知らせ】
第6回カクヨムコン特別賞&ComicWalker漫画賞受賞
「絶対無敵の解錠士」
《レーベル》スニーカー文庫
《イラスト》UGUME先生
《発売日》11月
書籍版でしか読めないオリジナルエピソードもあります!
現在予約受付中!
よろしくお願いいたします。
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何やらもめ事が起き、怒鳴り合うふたりの男。
それを見て怯えるマシロの様子から……恐らく、あのふたりの男のどちらかは、かつてマシロを奴隷同然に扱っていた、ドン・ガーネスの仲間であると俺は踏んだ。
「グルル……」
マシロの腕に抱かれたテリーも敵意をむき出しにしている……こりゃ確定かな。
問題はあのふたりのうちどちらがドン・ガーネスの仲間かってことになるが――どう見ても、あの人相の悪い大男の方だよなぁ。
「……いいぜぇ。おまえが俺を三流以下と語るなら、その体に俺の実力を刻み込んでやるよ!」
大男は腰に携えていた剣を抜く――って、変わった形の剣だな。刃の部分が湾曲しているぞ。
「あれはククリ刀ね」
「ククリ刀?」
「珍しい武器よ。ジェシカが見たら、きっと喜ぶでしょうね」
そんな武器もあるのか。
これに対し、若い男の方は――杖を取りだした。魔法使いだったのか。
その時、
「てめえ……魔法使いかぁ!」
相手が魔法使いと分かると、大男の方が突然叫びだした。
あの様子だと……個人的な恨みがあるって感じかな。
そんなことを思っていると、
「おいおい、なんだってあいつは急に怒りだしたんだ?」
「ヤツは昔、ピンク髪で黒いとんがり帽子をかぶった幼女の魔法使いにケンカを売ってボッコボコにされた過去がある。それ以来、魔法使いって名前を聞くだけでブチ切れるほど嫌いになったんだ」
周りの野次馬が親切に解説を挟んでくれた。
しかし……カッコ悪いな。
そもそもなんで幼女にケンカ売ったんだ?
「しかし、あれは仕方がなかったんじゃないのか? 相手は見た目こそ幼女だが、どこぞの大陸じゃ英雄扱いされているって聞いたぞ?」
ええぇ……世の中には凄い幼女がいたものだな。
感心している間に、ふたりの勝負の幕は切って落とされた。
「うらぁ!」
雄叫びをあげながら、大男が先に動く。
「!? 速い!?」
イルナが驚きの声をあげる。
それもそのはずで、大男はその巨体に見合わない凄まじい瞬発力で、あっという間に若い男との距離を詰めただけでなく、背後を取ったのだ。
若い男の方は、大男が背後に移動したことにすら気づいていないようで、未だに真っすぐ前を見つめている。
これに対し、勝利を確信した大男の口元がわずかに緩んだ。
――と、次の瞬間、
「ぶぼっ!?」
大男が謎の声を発したその直後、自慢の巨体はギルドの壁を突き破って外まで吹っ飛んでいった。
「「なっ!?」」
俺とイルナだけじゃなく、その場にいた全員が「信じられない」といった表情を浮かべたまま固まっている。
今のって……あの杖の能力? それとも、強化した魔法で大男を吹っ飛ばしたっていうのか? 確認しようとカタログを出すが、すでに若い男は杖をしまっており、外観を詳しくチェックすることができなかった。
すると、若い男はこちらへ向かって歩いてくる。
俺は咄嗟に茫然としたままのマシロの前に立ち、その姿を隠す。
幸い、男はこちらに気づく様子もなく、そのままギルドをあとにした。
「か、壁の修理代が……」
店主の恨み節が、静まり返ったギルドに響く。
未だにマシロの震えが止まらないことから……あの若い男の方が、ドン・ガーネスの関係者である可能性が高そうだ。
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