第165話 いざ、風のダンジョンへ
【お知らせ】
第6回カクヨムコン特別賞&ComicWalker漫画賞受賞
「絶対無敵の解錠士」
《レーベル》スニーカー文庫
《イラスト》UGUME先生
《発売日》11月
書籍版でしか読めないオリジナルエピソードもあります!
現在予約受付中!
よろしくお願いいたします。
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悪行の限りを尽くす
そのお気に入りの冒険者が、俺たちの目指す風のダンジョンにも来ている。
最初はマシロのことを考慮し、予定を変更することも検討していたが、そのマシロ自身の力強さに押されて予定通りダンジョン攻略に挑むことにした。
「ここではこれまでに見たことがないタイプのモンスターがいるらしいわ」
情報収集を担当したミルフィもたらされたダンジョンの特徴……これまでにないタイプのモンスター、か。一体どんなヤツなんだろう。期待と不安がじわじわと胸いっぱいに広がっていく。
他のメンバーの士気も高まっている中、
「…………」
マシロは複雑な表情をしていた。
緊張と恐怖が入り混じりつつ、強くなったという実感もあるため、「返り討ちにしてやる!」という強い意志ものぞかせているように感じる。
現に、廃棄のダンジョンでは大活躍だったし……今のマシロならば、敵を前に臆することはないんじゃないかと思う。
ただ、無理は禁物だ。
相手のバルテルはひとりとはいえ、油断はできない。
何せ、あのドン・ガーネスが気に入っている冒険者だ。何か、ろくでもない手を使って宝箱を手に入れているかもしれない。
あとは……昨日の戦闘で見せた、あの力だ。
あれは間違いなく、上位レベルの宝箱からドロップしたアイテムだろう。そもそも、何が原因でバルテルと戦っていたあの大男は吹っ飛ばされたのか……ヤツが魔力でだした杖に何か秘密があるのだろうか。
何もかもが未知数の冒険者・バルテル。
もし……ヤツと戦うことになったら、いつも以上に注意深く戦う必要がありそうだ。
風のダンジョン近くは多くの冒険者で盛り上がっていた。
「こういった雰囲気は久しぶりね」
「本当ね」
「ようやく健全なダンジョンへ潜れるって感じがしますよ」
イルナ、ミルフィ、ジェシカの三人がポロッと漏らしたように、これだけ人がいて活気あふれるダンジョンというのは、リカルドさんたち本隊が調査中である大迷宮のダンジョン以来だろうか。入り口周辺にテントを持ち込んで長期戦の構えを見せているパーティーもチラホラ存在していた。
「こうなってくると、中も楽しみだな」
ライバルが多いということは、裏を返すと、それだけ攻略しやすい――つまり、大きな価値を生み出すお宝はすでに誰かに発見されている可能性が高いが、役に立つアイテムやそこそこのレア度を持つアイテムがドロップするってところかな。
ダンジョンへ潜る直前、そんなことを口走ると、
「でも、仮に解錠レベルが高いお宝を入手できたとしても……それを実際に開ける解錠士を見つけなければ意味はありませんよね」
真顔で指摘するマシロ。
――そうなのだ。
レア度の高い宝箱をゲットした時は、それこそ飛ぶように嬉しがるだろう。しかし、ほとんどの冒険者はその中身を開けるのに、さらに大変な努力が必要となる。
売ることもできるが、どれだけ解錠レベルが高くても、中身が伴わないという体験は必ず通る道だ。
そんな彼らの大半は、宝箱を誰にも譲らず、その生涯をひっそりと終える。
或いは……あの廃棄のダンジョンへ放り投げるか。
いずれにせよ、俺たちにとってはお宝をゲットして旅の資金を稼ぐいいイベントになると思う。
そう確信していると、ダンジョンの中から何やら涼しげな風が。
「さあ、行きましょう!」
ミルフィは先頭を早歩きで進んでいく。
ヤル気満々って感じだが……ちょっと気負いすぎている感もある。マシロのことを気にかけているのかな。
「さあ、俺たちも行こう」
浅くため息をついてから、俺たちはミルフィのことを追った。
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